日産証券CXレポート

為替との相関性が崩れた株価指数と原油相場

 

 2017年6月26日(月)
㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤敏憲

国内の株式指数と円-ドル為替レートとの間には2012年の年初から今春まで強い相関性が見られ、為替が円安になると株価が上昇し、円高になると株価が下落していた。(グラフ1参照)

東京証券取引所に株式を上場している企業のおおよそ8割は為替が円安になると収益が拡大し、円高になると収支が悪化する。事業に占める輸出や海外事業の構成比が高いため、円安は輸出採算の改善あるいは海外事業の収益の円換算額の拡大につながるからだ。円安で株価指数が上昇するのは合理性があったといえる。

円安は景気拡大につながらない

ところが、日本経済全体でみると円安は必ずしも国内景気の拡大につながるとは限らない、特に、2011年~2015年は、貿易収支が赤字(輸入超過)だったことから、円安は日本経済全体でみると、経済成長を抑制する要因の一つになっていたとも考えられる。株式市場と日本経済の収益構造は必ずしも一致しないのである

ちなみに、2011年~2015年に貿易収支が赤字になっていたのは、東日本大震災の津波によって東京電力福島第一原子力発電所が被災し、原子力事故が起きたのをきっかけに、政治判断と行政施策によって原子力利用率が著しく低下、原子力による発電量の不足分を火力発電所の焚き増しによってカバーせざるを得なくなり、化石燃料の輸入が拡大したからだ。貿易収支は、2015年に赤字が縮小し、2016年に黒字に転換したが、これは、原油価格の低下によって鉱物性燃料の輸入額が減少したことによる。

原油も他指標と相関性があることも

原油相場も、他の経済指標と相関性が生じることがある。2007年9月~2008年11月、及び、2012年1月~2015年7月には、原油価格とドル-ユーロ為替レートとの間に強い相関性が見られた。(グラフ2参照)

ドルがユーロに対して高くなる局面で原油価格が下落し、ドルが安くなる局面では原油価格が上昇していた。ドルが他通貨に対して高くなることは他通貨圏では原油価格がその分上昇することになるので、合理的な関係といえなくもない。ただ、上述した期間以外では原油価格と為替との間に相関性は確認できなかった。なお、2008年10月~2011年1月は原油価格と米国の株式指数との間に相関性がみられた。

現在は相関性なく需給を反映

先物市場における取引の相当部分はシステム売買によって占められている。相関性がみられる市況は相互に影響しあっていることがある。そのような関係が確認されない原油相場の現状は、需給や需給に影響を及ぼす情勢の変化を反映しやすくなっていると考えられる。

グラフ1 株価と原油
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グラフ2 NY原油先物期近価格とドル・€レートの推移(週足、2005年7月~)
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《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)。

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