日産証券CXレポート

原油、協調減産合意も効果薄

 

 2017年6月12日(月)
立正大学経済学部教授
林康史

WTI、50ドルを下回る

WTI価格は、ОPEC総会の前に、減産の延長に対する期待感から強含み、一時は再び50ドルを越えるところまで回復、ОPEC総会の当日、5月25日には52.00ドルの高値を付けました。しかし、同日中に48.90ドルの安値を付け、その後はじりじり価格を下げる展開となり、現在は45ドル付近で膠着しています。

ОPEC総会以外に材料がなかったこともありますが、ОPEC総会で減産延長を期待し、そうなった(想定内の内容であった)ことで、「織り込み済み」として、文字通り「噂で買って事実で売る」という反応でした。価格水準でいうと、減産延長の期待で買われる前の水準まで戻って、いわゆる“いってこい”に終わったということです。

減産合意延長

5月25日、ОPECはロシアなどのОPEC非加盟国も含めた産油国会合において、協調減産を9カ月延長することで合意しました。しかし、その内容は事前に報道されていたマーケット・コンセンサス通りで、新たな減産参加国もなく、期間の長期化・減産内容の強化といったサプライズもなかったため、マーケットの反応は冷静なものでした。

ОPEC各国の減産遵守率は依然、高水準のままで、産油国は今後、減産を続けて世界の需給バランスの改善を目指していくことになります。

地政学的リスク?

ここにきて新たに少しキナ臭い話が出てきました。サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンの4カ国(これにイエメンの暫定政権とモルディブを加えた計6カ国)が、協調してカタールとの国交を断絶しました(サウジアラビアとUAEの2カ国はОPEC加盟国)。カタールは、そもそも、サウジアラビア、UAE、バーレーンと同じく、スンニ派の政体で、今回、国境も封鎖するなどというと、少し戸惑う感じもあると思います。

直接的な理由はわかりませんが、もともと、カタールは、建国時にUAEに加盟しなかったこと等に遡って考えないといけないかもしれません。地下資源問題では、イランと一緒に行動する可能性もなくはなく、例のカタールの放送局アルジャジーラへの反発もあったようです。また、トランプはあいかわらずトンチンカンで、とくに中東問題はわかっていないようで、「米国の調整機能に期待できないと判断したサウジアラビアは、カタールとの国交断絶を見合わせるようにとの米国の助言したのを無視した」という話もあります。

カタール政府は、国営カタール通信が5月24日に「ハッカー攻撃を受け、偽ニュースが流された」、「カタールの国家元首タミム首長がアラブ諸国にはイランを敵視する根拠がないと発言したとするデマが流された」と述べていますが、サウジアラビアは、そうした発言を事実だ(カタールは、対イラン強硬姿勢を貫くアラブ湾岸諸国に完全には同調してこなかつた)と考えていて、なかなか複雑です。

一方、原油価格を考慮した場合、紛争の匂いは、価格上昇につながるという思惑を指摘する向きもありますが、「筋悪」かと思います。

いずれにせよ、この問題は、文化や風俗の差異に基づくものだとすると、意外に長引くこともありえます。

カタールの原油生産量自体は日量65.6万バレルとОPEC全体の2%程度と多くはありませんが、これまで協調減産を主導する一翼を担ってきました。協調減産が順調にきていても原油価格が弱気に推移している現状で、再び足並みが揃わない可能性が出てきました。このカタール問題は7月の減産監視委員会で協議されるとのことですが、原油とは次元の違う問題です。カタールを取り巻く動きについては今後も注視していく必要があります。

依然需給バランスとの睨み合いか

今後の展開としては、需給バランスを基本として、それにカタール問題が加わると思います。

シェールオイルの生産は引き続き増加し、産油国会合で協調減産の期間延長がなされたことは、マーケット・コンセンサス通りでした。

原油在庫の減少を目指すОPECもカタール問題という懸念が出てきたなか、引き続き現在の遵守率を維持できるのか、維持できたとしてもシェールオイルの増産により相殺されてしまう分を上回ることができるのかという点が注目されます。

今後は米国の需要シーズンを迎えることとなり、当面は上値50ドルの壁に押し戻される展開になると考えますが、テクニカルには、レンジの下方をブレイクすることにも注意が必要かもしれません。

《執筆者紹介》

林康史(はやしやすし)
立正大学経済学部教授。大阪大学卒。法学修士(東京大学)。メーカー、金融3業態を経て、現職。<著書・訳書>『改定版 基礎から学ぶ デイトレード』、『トレーダーの発想術――マーケットで勝ち残るための70の箴言』(訳)『株式投資 第4版』(共訳)『デイトレード』『マネーの公理』『運とつきあう』(以上、監訳)以上、日経BP社、『戦略的リスク管理入門』(監訳)勁草書房、ほか多数。最新刊は、『貨幣と通貨の法文化』(編)国際書院。

【免責事項】

「週刊日産証券C X レポート」( 以下、本情報と略記) は、株式会社市場経済研究所が提供する一定の条件の下で執筆者が作成したレポートです。

利用者は、本情報を利用者ご自身でのみご覧いただくものとし、ご自身の判断と責任においてご利用ください。本情報は一定の情報を提供するものに過ぎず、特定の銘柄、金融商品、商品価格などについての投資・購買に関する助言や勧誘を目的としたものではありません。また、市場経済研究所は、投資助言・代理業を一切行っておりません。

利用者は、本情報に関して、第三者への提供や再配信、再配布、独自に加工すること、複写もしくは加工・印刷したものを第三者に譲渡または使用させることはできません。また、本情報のウェブページへのリンクは禁止します。その他、市場経済研究所が適当でないと判断する行為をした場合には、利用を停止させて頂くことがあります。

本情報の利用にあたり、利用者が故意または過失により、市場経済研究所および当該執筆者に対して、何らかの損害を与えた場合には、市場経済研究所等は損害賠償請求をすることがあります。

レポート
TOPへ