日産証券CXレポート

新車販売の伸び悩みが米ガソリン需要を抑制

 

 2017年5月29日(月)
(株)伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤 敏憲

減少に転じたガソリン需要

EIA(U.S. Energy Information Administration)の週次統計によると、アメリカのガソリン出荷量は、2012年から13年半ばまでは伸び悩んでいたが、13年半ばから16年11月まで増加傾向で推移した。しかし、2016年12月以降は前年実績を下回るようになり、昨年12月から今年5月の出荷量は前年実績を平均で約3%下回っている。

燃費悪い車が増加

アメリカでは、景気の回復に伴って、相対的に燃費が悪いピックアップトラック、SUVなどの小型トラック、大型車などの販売構成比が高まっていた。これが2013年半ばから16年にかけてガソリンの出荷量が増加していた理由の一つだったと考えられる。

Autodataの『U.S. Market Light Vehicle Deliveries』によると、2012年に48.9%だった小型トラックの構成比が16年には59.5%へ10%ポイント以上高くなっている。この傾向は17年に入っても変わっておらず、今年1月~4月の小型トラックの構成比は61.6%まで高まっている。

ところが、今年に入り販売台数は伸び悩んできた。アメリカの新車の販売台数の伸び率は2012年~16年の平均が6.8%増だったが、17年1月から4カ月連続で前年実績を下回り、17年4月は前年同月比4.7%減の142万6千台となり、一昨年の実績も下回った(グラフ1、2参照)。

燃費改善も一因

先進諸国の新車の販売は、2011年頃から概ね好調に推移しているが、先進国では自動車の販売台数が増加していてもガソリンの需要が増加しないことがある。これは、新車の販売台数に占める買い替え需要の比率が高いことによる。

特に近年は、燃費の良いエコカーの普及が拡大しているため、自動車の買い替えによってガソリンの平均燃費が改善し、ガソリンの需要が抑制される傾向が顕著になってきた。新車販売が好調で自動車の保有台数が伸びていれば、平均燃費の改善と相殺されるが、販売台数が伸び悩むと燃費の改善がストレートに需要の減少につながってしまう。

アメリカで原油や石油製品の需給調整が進まない理由としてシェールオイルの増産が挙げられることが多いが、ガソリン需要が伸び悩んでいることも理由の一つといえる。これは、アメリカだけでなく、世界全体の石油及び原油需要の伸びが鈍化している理由、そして、原油価格の上昇が抑制されている背景事情の一つになっていると考えられる。

グラフ1 米国 新車販売台数
チャート

グラフ2 米国 新車販売台数 前年比伸び率
チャート

《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)。

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