日産証券CXレポート

常態化した金とプラチナの価格差逆転現象

 

 2017年5月22日(月)
(株)資源・食糧問題研究所
代表 柴田明夫

弱要因が拮抗

ニューヨークの金価格は、4月の前半と後半以降で強弱対照的な動きとなった。 金は4月17日、1オンス=1294ドル台の年初来高値を付けた後、下落基調に転じ、5月9日には1214ドルと2カ月ぶりの安値を付けた。その後は1250ドル前後まで買い戻されているものの、方向感に欠ける展開となっている(図1参照)。金が1300ドルを目前に膠着状態にあるのは、政治、金融、原油市場で強弱要因が拮抗しているためだ。

仏大統領選が売り材料

4月後半以降、金急落を招いた政治的要因として挙げられるのは、フランス大統領選だ。4月23日に第1回投票が行われた同選挙では、事前の世論調査で首位をうかがう勢いだった極右政党・国民戦線のルペン党首は2位にとどまり、中道系独立派候補のマクロン前経済相が最多票を獲得。これにより、欧州連合(EU)離脱を警戒した投機マネーのリスク回避姿勢が後退し、金を売る動きが強まった。5月7日の決選投票で、マクロン氏が圧勝したことで、金に対する売り圧力が強まった。

ロシアゲートが買い材料

米国では、トランプ大統領がロシア側に機密情報を提供していたという報道が流れる中、5月9日に、米連邦捜査局(FBI)のコミー長官が突然解任されたことから、与野党からの批判が強まった。さらに、トランプ氏が同長官に対し、ロシア疑惑(ロシアゲート)に絡んで辞任したフリン前大統領補佐官への捜査を打ち切るよう再三にわたり求めていたとの疑惑が新たに浮上。連邦捜査に介入した疑いでトランプ氏が議会から弾劾される可能性があるとの憶測から、米国政治の先行き不安が拡大。投資家のリスク回避指向が強まったことで、金の買い材料となった。

イランは保守強硬派が衰退

5月19日に行われたイラン大統領選挙では、保守穏健派のロウハニ現大統領が圧勝した。もともと同氏有利とみられていたが、直前になって保守強硬派のライシ前検事総長がハメネイ最高指導者の支援や革命防衛隊の強力な支持を背景に急迫したことで、中東での地政学リスクが高まった。

今回の選挙での隠れた争点は、ロウハニ大統領による「核合意順守→制裁解除進展→外国企業・外資参入」の結果、1979年のイラン革命後40年近くにわたって国内産業を牛耳ってきた革命防衛隊の関連企業が、外国企業により駆逐される恐れがあることだった。

すなわち、保守強硬派にとってはイスラムの理念というよりも国内産業優先を説く経済的実利をにあったわけだ。しかし、穏健派ロウハニ大統領の勝利によって、革命防衛隊を基盤とする保守強硬派の衰退は避けられぬ一方、中東の地政学リスクは、少なくともイラン国内を巡っては遠のいたといえよう。

FRBも追加利上げは先送り?

金融面では、米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げが金にとっての相場圧迫要因だ。FRBが3月15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で3カ月ぶりに0.25%の利上げを決定して以降、市場の関心は、次回6月13日のFOMCで、今年2回目の利上げがされるかどうかにある。ただ、第1四半期の実質GDPの速報値が前期比年率0.7%増(事前予想同1.2%増)に止まったのをはじめ、このところ弱い経済指標が続いていることから、利上げは先送りされる可能性が高い。この場合は金にとっての相場下支え要因となる(図2参照)。

原油価格上昇は強材料

一方、原油価格の上昇は、商品市場でのリスクが低下し、金にとっては相場弱材料といえそうだ。WTI原油は19日に1バレル=50ドルを回復した。サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物相とロシアのノバク・エネルギー相は5月15日、協調減産を来年3月まで9カ月間延長する必要性で意見が一致したためだ。市場では25日の閣僚会合の行方について、減産延長が正式決定されるとの見方が強まっているものの、その期間や減産規模について不透明感が残っており、決定が需給不均衡の解消につながらない場合は、原油が売られ金が買われる格好となろう。

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《執筆者紹介》

亀井 幸一郎(かめいこういちろう)
マーケット ストラテジィ インスティチュート代表取締役、金融・貴金属アナリスト、1979年中央大学法学部法律学科卒業。山一證券に8年間勤務後、1987年投資顧問会社で日本初のFP会社でもあるMMI入社。1992年ワールド ゴールド カウンシル(WGC/本部ロンドン入社。企画調査部長として経済調査、世界の金情報の収集、マーケット分析、市場調査に従事。2002年現職。「急騰前に金を買いなさい」(廣済堂出版)など

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