日産証券CXレポート

原油―シェールオイル生産とOPEC総会に注目

 

 2017年5月15日(月)
立正大学経済学部教授
林康史

WTI、50ドルを下回る

WTIは、再び1バレル50ドルを下回る水準で推移しています。50ドルの水準は、テクニカル的に、こなれてしまった感がありますが、若干、軟調になっている感じもあります。

OPEC(石油輸出国機構)と非OPECの減産協調が遵守されている(OPECの日量120万バレルの減産をほぼ達成している)こと、今月25日に予定されているOPEC総会で、協調減産の期間が延長されるという見方があるなかで、もちあいながらも弱いのは、シェールオイル増産とOPEC総会での合意をマーケットが織り込みつつあるためかと思われます。

今後の注目は、やはり、シェールオイル生産とOPEC総会です。

シェールオイルの増産

4月のレポートで、「仮に減産期間を延長しなかった場合、シェールオイルが増産されていること等もあり、またもや50ドルを割り込む可能性も十分考えられます」と書きましたが、「減産期間を延長しても軟調になる」ということなのかもしれません。

シェールオイルが増産されているのみならず、その先行指標となる原油掘削リグカウント数も増えており、当面、増産は続き、その増量自体も増えそうです。

原油価格相場と世界経済

需要面では、世界経済の予測は、ここ数カ月で先進国を中心に上向きに修正されました(IMFの予測では、ブラジルは下方修正)。それから考えると、石油価格は下固めをしても良さそうなのですが、石油需要見通しは逆に若干、下方修正され、「思ったほどは石油需要が伸びていない」と、マーケットは見ているようです。IEA(国際エネルギー機関)は、今後、4~6月期には需要は元に戻ると予想しています。

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原油価格の影響大の新興国

現状は以上ですが、今回は、原油価格と新興国経済について述べておきたいと思います。

新興国経済は、原油価格の影響を受けやすいといえます。資源輸出型の国は、原油価格が下落すると厳しい状況に追い込まれます。ロシアは、原油価格下落に端を発する通貨下落を止めるために、利上げを行い、景気はさらに悪化しました。米国の利上げも、同様の結果を引き起こすことが考えられます。インドのような内需型の場合、原油価格下落は、インフレファイティングの必要がなくなることを意味しますから、利下げが可能となります。メリットが大きいということです。

中国の場合は、メリットもありそうですが、海外の石油関連企業を傘下に置いている関係から(かつ、経営はうまくいっていないと見られていますから)、原油価格の下落は、石油関連製品のだぶつき、国内での安売りの誘因ともなり、景気の足を引っ張ることも考えられます。

動き始める可能性も

基本的には、目新しい材料はありません。

今後の注目は、やはり、シェールオイル生産とOPEC総会です。シェールオイル生産は引き続き増加、OPEC総会では協調減産の期間が延長されるという見方がマーケット・コンセンサスになりつつあります。相場は、コンセンサスと現実のギャップを埋めに行きます(とくに短期的な相場変動のエネルギーは、コンセンサスと現実のギャップだと考えられます)。ただ、もう一つのマーケット・コンセンサスは、「原油価格の上値は重い」というものです。私見ですが、マーケットは、現在の材料に飽きてきている感もあり、動きはじめることも気にかけないといけない感じがします。

《執筆者紹介》

林康史(はやしやすし)
立正大学経済学部教授。大阪大学卒。法学修士(東京大学)。メーカー、金融3業態を経て、現職。<著書・訳書>『改定版 基礎から学ぶ デイトレード』、『トレーダーの発想術――マーケットで勝ち残るための70の箴言』(訳)『株式投資 第4版』(共訳)『デイトレード』『マネーの公理』『運とつきあう』(以上、監訳)以上、日経BP社、『戦略的リスク管理入門』(監訳)勁草書房、ほか多数。最新刊は、『貨幣と通貨の法文化』(編)国際書院

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