日産証券CXレポート

原油、OPEC減産局面での経験則

 

 2017年5月1日(月)
㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤 敏憲

協調減産時は下落が多い

OPEC加盟国などが過去に協調減産を実施した局面では原油価格が下落したケースの方が上昇するケースより多かった。減産すれば需給が引き締まり、増産すれば需給が緩むと考えられるので、意外な結果と思われるかもしれないが、OPECが原油の需給を調整するスウィングプロデューサーの役割を担っていること、協調減産が解消されると減産分に相当する増産が行われる可能性があることなどを考慮すると、理にかなった動きといえる。

非OPEC諸国の油田は、原油価格が採算を割り込むような低水準でない限り、能力いっぱい生産するケースが多い。このため、需要の伸びが高く、非OPECの増産でカバーできないケースでは、OPECが供給量を増やして需給のバランス化を図り、逆に、需要が伸び悩んだり、非OPECの供給量が需要の伸びを上回ったりしたケースでは、OPECが減産して原油価格の下落を抑止しようとすることが多い。

これがスウィングプロデューサーの役割で、OPECの減・増産は、「OPECが減産しなくてはならないほど需給が緩んでいる」、あるいは、「OPECが増産しなくてはならないほど需給が引き締まっている」と解釈するのが妥当と考えられる。

発表直後は上がり、その後下がる

緩んでいた需給を引き締める目的でOPECなど主要産油国が協調減産した局面では、減産の実施を発表した直後に油価が上昇したケースが何例かみられたが、その後に反落するケースが多かった。OPECが協調減産の実施に合意したと発表した昨年9月以降の原油価格の動きは、この経験則通りの動きだった。

IEAは、4月時点で、世界の原油需要を、2014年実績9,298万BD(日量バレル)、2015年実績9,495万BD、2016年実績9,659万BDに対して2017年予想9,791万BDと見込んでいる。原油需要の前年比の増加量は、2015年197万BD増、2016年164万BD増、2017年137万BD増予想と伸び率は鈍化している(グラフ参照)。1月から協調減産を実施しているOPECやロシアなど主要産油国の減産量は日量180万BD前後に及んでいる。

協調減産終了後は需給均衡に1年半から2年

協調減産が終了すると生産量は足元の需要増ペースの1年分以上増加し、原油価格の水準次第では、これに北米のシェールオイルなどの増産分が加わる可能性がある。原油の需給はまだ引き締まっていないが、需給が均衡するまでに1年半~2年程度の期間が必要になる計算になる。

(グラフ)世界の原油需要の推移(日量百万バレル)
チャート

(データ出所)IEA

《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)。

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