日産証券CXレポート

原油、地政学的リスクが高まる

 

 2017年4月17日(月)
立正大学経済学部教授
林康史

WTI、50ドルを回復

50ドルを下回る水準で推移していたWTI価格ですが、3月末に、50ドル台に乗せた後、元のレンジで推移しています。

その背景には、OPECと非OPECの減産協調の遵守率が良かったこと、米国原油在庫があまり増えなかったことなどが挙げられますが、4月7日にシリアでの米国によるミサイル攻撃等、地政学的リスクの高まりがあったと思われます。

徳俵で踏み止まっているOPEC

原油価格が50ドルを割り込んだときに、OPECがどこまで我慢できるか懐疑的な見方も多く、減産協調が続くかどうかがポイントでした。

OPECの3月の月次報告によると、日量あたりの産油量は前月をさらに下回り、約3193万バレルとなっています。これにより、3月の遵守率は99%と、予想以上に高いものとなりました。1~3月期平均で見ると、当初の目標であった「日量あたり120万バレル」という減産目標をほとんど達成したレベルです。

減産期間を延長するという報道も出ています。延長の提案を主導しているのはサウジアラビアとのことですが、ロシアも含めた主要産油国との話し合いをまとめられるかどうかが焦点となりそうです。

産油国とすれば、徳俵に足がかかった状況下で、地政学的リスクが高まったわけですが、仮に減産期間を延長しなかった場合、シェールオイルが増産されていること等もあり、またもや50ドルを割り込む可能性も十分考えられます。テクニカル面では、50ドルはこなれてしまった感もあり、あまり意識する水準ではなくなりつつあるようです。今後のOPECを注視していく必要があります。

地政学的リスクと米ドル

4月7日に米国がシリアにミサイルを発射したことに端を発し、外国為替は1ドル110円のラインを割り込み、円高ドル安方向に動いています。ロシアとの関係悪化も取り沙汰される中で、リスクオフの流れとなり、円が買われたようです(かつての「有事のドル買い」という動きを知る世代としては、わかっていても、若干の驚きをともなう動きといえます)。

本来なら、ドルが下落すれば、購買力の低下を招くわけですから、産油国にとってはありがたくない展開ですが、今回は地政学的リスクの高まりによるドルの軟化なので、直接的に減産の一次的凍結という方向に動くことはないと思われます。地政学リスクは当面、続くと見られることもあり、若干の強含みでの推移が考えやすくなっています。テクニカルとしては、次に相場の頭を抑える水準は60ドル辺りと思われますが、実際にもみ合ったしこり玉が残っているわけではありませんから、あまり強い抵抗はなさそうです。

地政学リスク次第ですが、しばし、強保合(もちあい)が続くものと思われます。

《執筆者紹介》

林康史(はやしやすし)
立正大学経済学部教授。大阪大学卒。法学修士(東京大学)。メーカー、金融3業態を経て、現職。<著書・訳書>『改定版 基礎から学ぶ デイトレード』、『トレーダーの発想術――マーケットで勝ち残るための70の箴言』(訳)『株式投資 第4版』(共訳)『デイトレード』『マネーの公理』『運とつきあう』(以上、監訳)以上、日経BP社、『戦略的リスク管理入門』(監訳)勁草書房、ほか多数。最新刊は、『貨幣と通貨の法文化』(編)国際書院。

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