日産証券CXレポート

原油、米の増産がOPECの減産効果を半減

 

 2017年4月3日(月)
㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤 敏憲

米国の原油生産が増加している。DOE/EIA(Department of Energy/Energy Information and Administration)が公表している週次統計によると、米国の原油生産量は17年2月17日の週から6週連続で増加し、17年3月24日の週の生産量は9,147千BD(日量バレル)と、16年7月1日の週に記録した直近のボトム生産量の8,428千BDに対して719千バレル増となっている。15年6月5日の週に記録したピーク生産量9,606千BDと比較すると減産幅が1,178千BDから459千BDへ約6割縮小している計算になる(グラフ参照)。

石油リグの稼働基数は回復基調

米国の石油リグの稼働基数は、14年8月以降の原油価格の急落を反映して、14年10月から16年5月にかけて減少した後、回復傾向で推移している。BAKER HUGHSが調査・公表している米国の石油リグの稼働基数は、ピーク時の14年10月10日が1,609、直近のボトム時の16年5月13日~5月20日は318だったが、17年3月31日は662と、ピーク時に比べるまだ半分以下だが、直近のボトム時と比べると2倍以上に増えている(グラフ参照)。

米国の原油生産量と石油リグの稼働基数の関係を、ピーク時と直近で比較すると、リグの稼働基数の減少率に比べて生産量の減少率の方が大幅に小さくなっている。これは、14年10月以降に停止したリグの大半が在来型の油田に比べて規模が小さいシェールオイルのリグだったこと、稼働中のリグが価格の低下をカバーするため生産量を増やす対策を講じていることなどによると考えられる。

採掘コストは10~20%減

ちなみに、シェールオイル開発のコストを回収できる損益分岐点の原油価格は、原油価格とリグの稼働基数との相関関係から、現時点で1バレル40~70ドル程度のプロジェクトが多いと推察される。損益分岐点は、生産技術の向上、人件費や一部の資材・機材の調達コストの低下などによって、この1~2年で10~20ドル程度下がっていると推察される。このため、原油価格が60ドルを上回ってくると、リグの稼働基数がさらに増えて、米国の原油生産量がピーク時の水準を超えると予想される。

OPECは140万BD減

OPECが昨年11月末、今年1月から6月にかけての原油生産量を120万BD削減することで合意し、ロシアなどOPECに加盟していない主要産油国も昨年12月に、OPECと同時に合計55万.8千BD減産することで合意した。この協調減産に合意した国々の原油生産量は1月以降に140万BD程度減少している模様だが、協調減産に参加していない米国の増産がその効果の約半分を打ち消している計算になる。

(図)
チャート
(データ出所) 「貿易統計」、IR&A予想、単位熱量は「総合エネルギー統計」

《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)。

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