日産証券CXレポート

エネルギー市況と環境分野のダイベストメント

 

 2017年3月6日(月)
㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤 敏憲

ダイベストメント(Divestment)とはインベストメント(Investment=投資)の反意語で、「是正を図りたい特定行為に関わる保有資産を売却したり、投資対象から除外したり、事業から撤退したり、これらを促したりする行動」のことである。 代表的な事例には、南アフリカ共和国に人種差別政策(アパルトヘイト)の是正を促すため、企業や個人が同国に投資しなくなったり、同国での事業から撤退したり、同国で事業を行っている会社への投資を引き揚げたりする動きが広がったケースがある。この他、対人地雷禁止に関するオタワ条約(1999年)、クラスター弾に関するオスロ条約(2010年)などを支援するため、関連企業に対するダイベストメント活動が世界に広がったケースも知られている。

1,000近いダイベストメント組織

近年、環境関連のダイベストメントが世界的に広がっている。2011年、米国のスワースモア大学の採択が始まりとされ、その後、世界各地の大学、自治体、政府や地方自治体の年金基金、保険会社、銀行、財団法人、教会などが採択した。2017年3月現在で環境関連のダイベストメントに参加している組織・団体は1,000に迫っている。

金融・資本市場でも、ESG(環境・社会・ガバナンス)活動への取り組みの一環として環境関連のダイベストメントを実施する機関投資家が増加している。例えば、ノルウェー政府の年金基金運用会社「ノルジェス・バンク・インベストメント・マネジメント(NBIM)」が2012年に石炭に関するダイベストメントを導入し、その対象が年々拡大されている。

ファンドの総額は数百兆円

2016年時点の規定は、「事業活動の30%以上を石炭関連事業が占める、もしくは売上の30%以上を石炭関連事業から得ている企業を投資先から除外する」という内容で、対象企業は239社、その中には日本の電力会社なども含まれている。年金基金では、スウェーデン、デンマーク、オランダ、カナダ、オーストラリア、米国カリフォルニア州などの基金も独自に定めた規定に基づいた環境関連のダイベストメントを導入している。

また、一般の機関投資家でも、環境ファンドの運用資産が増加するなどして、2016年3月現在で、環境関連のダイベストメントを投資選別に採用しているファンドの総額は数百兆円に及ぶと推定される。

石炭以外に影響も

図にみるように、石炭は新興国や発展途上国を中心に世界的に需要が拡大していたにもかかわらず、2010年~2016年に他のエネルギー資源の価格に対して相対的に割安になっていた。この背景には石炭に関するダイベストメントの影響があったと考えられる。

石炭の価格は、昨年秋に中国が生産を抑制した影響などにより急騰したが、ダイベストメントの拡大によって再び割安になる可能性がある。石炭以外のエネルギー資源の価格もダイベストメントの影響を受ける度合は今後拡大すると予想される。

鉱物性燃料輸入平均単価の推移
チャート

《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)。

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