日産証券CXレポート

原油・石油製品、冬季は天候が影響を及ぼしやすい

 

 2017年2月6日(月)
㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤 敏憲

天候は景気以上に石油需要を左右し原油市況にも大きな影響を及ぼすことがある。冬季は特にこの傾向が強い。暖房・加熱用燃料の需要が気温・水温の影響を直接受けるほか、自動車用燃料もエアコンによるエンジン負荷、道路状況、使用頻度などが気温の変化や降雪の影響を受けるからである。

昨年は異常暖冬が安値の一因に

昨年は北半球が異常暖冬だった。AccuWeather.comのデータによると、ニューヨークの15年12月の平均気温は平年に比べて8℃高い14℃、16年1月は1℃高い5℃、16年2月は2℃高い7℃となり、冬季(15年12月~16年2月)の平均気温が平年を約4℃上回った(グラフ1参照)。欧州やアジアも平年に比べて暖かかった。 気象庁のデータによると、東京の昨年の冬季の平均気温は81年~10年の平均を約2℃上回っていた。これが、石油需要を抑制し、原油相場が昨年2月に03年以来の安値を記録した原因の一つになっていたと考えられる。

暖冬の影響をもっとも強く受けるのは暖房油で、昨年は想定外に需要が減少したため需要期に在庫が積み上がり、生産・出荷を抑制せざるを得ない状態に陥った。  このため、暖房油の市況も崩れ、冬季にガソリンより安い価格で取引されるようになった。

季節性ある米の石油製品市況

米国の石油製品市況には季節性がみられ、冬季はヒーティングオイルがガソリンより高くなり、夏季はガソリンの方がヒーティングオイルより高くなることが多い。

昨年は冬季にヒーティングオイルがガソリンより安くなったが、このような状況になったのは原油市況が低迷していた02~03年シーズン以来13年ぶりのことだった。

今年の冬は、世界的に12月の平均気温は平年並みだったが、1月は平年を上回った地域が多い。例えば、ニューヨークの16年2月の平均気温は7℃でほぼ平年並みだったが、17年1月は6℃と昨年より1℃高く、平年を約2℃上回っていた(グラフ2参照)。これが、北米でヒーティングオイルやガソリンの需要を押し下げ、石油製品及び原油の需給調整が遅れている原因の一つになったと考えられる。

3月までは要注意

ただ、ヒーティングオイルは、需要期には気温が数日間下がったり上がったりするだけで在庫量が大きく変動し、市況も左右されやすい。3月までは天候の変化に注意を払う必要があろう。

なお、暖冬と地球温暖化が同じように扱われることがあるが、地球温暖化は、地球表面の大気や海洋の温度が長期的に上昇傾向で推移する現象のことで、年平均気温の変化は100年間で約1℃にとどまっている。

グラフ1 ニューヨークの気温の推移(2015-2016)
ニューヨークの気候の推移グラフ

グラフ2 ニューヨークの気温の推移(2016-2017)
ニューヨークの気候の推移グラフ
(データ出所:AccuWeather.com)

《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)。

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