日産証券CXレポート

原油 材料難で弱保合か

 

 2017年1月23日(月)
立正大学経済学部教授
林康史

2016年のマーケットの間違いから学ぶ ~今後の動きは過去からの推察では読めないか

さて、2016年の金融マーケットを振り返ると、マーケットのビッグサプライズが2つありました。一つは、6月にあったブレクジット(英国の欧州連合(EU)からの離脱)です。第二次世界大戦時から数えるともう少し古い歴史があることになりますが、1957年3月25日に調印された欧州経済共同体設立条約からほぼ60年にわたって、欧州は一つになろうとしてきました。今回のブレクジットは、それが逆回転し始めた可能性を示しています。もしかしたら、世界史の大転換点になるかもしれません。

そしてもう一つは、米国のトランプ大統領の誕生です。これにもマーケットは驚かされました。もう少し細かく述べると、その際、マーケットは2つ間違えたので、逆に混乱はしなかったというほうが正確かもしれません。マーケットのコンセンサスは、①クリントン候補が勝利し、②その結果、ドルや米株はフェイバー(利益が出ている状態。ここでは、若干のドル高・株高へ推移)するというものでした。しかし、二重で読みを間違えたので、結果として、コンセンサスに近いものとなりました(ただし、クリントンが勝利という場合の予想よりもドル高、株高が若干大幅でしたが)。

大きな構造変化が起こった

これらは、偶々ということではないと思います。私は、大きな構造変化が起こっているかもしれないと考えています。結局のところ、英国民は総体として、EUからの離脱を決定したのだし、米国民も総体として、トランプを選んだということです。いずれも少数派が変化を引き起こしたと考えるべきではないということです。

つまりは、世界中で何か大きな変化(ビッグチェンジ)が起こっていると考えなければならないのです。そうだとすると、これまでの連続線上の予測は無意味であるばかりか、間違いのもととなります。ブレクジットもトランプ勝利もマーケットが読めなかったのは、これまでの連続線上の予測を行っていたためです。だから、間違えたのです。

今後市場を読んでいく上で、大いに注意を払っていかなければなりません。世界の政治と経済は地殻変動を起こしていると考えて対応することが不可欠です。

50ドル台を推移

さて、今現在の原油価格の話に移りますと、WTI価格は、12月16日以降、50~55ドルで保合う(もちあい)の状態です。現状では、減産合意に対する期待はまだ裏切られていないといえるでしょう。前にも述べた通り、今後は特に需給のバランスに注目する必要があり、減産合意が遵守されるか否かは供給側の大きな要因のひとつと言えます。

減産開始前の最後の月である昨年12月のOPECの原油生産量は、3310万バレル(加盟資格中のインドネシアは除く)と発表されました。前月からは約20万バレルの減少となり、減産合意水準である3250万バレルまでは、まだ60万バレルの開きがあります。

21~22日にかけて、ウィーンで原油減産の監視委員会が行われましたが、OPEC議長(サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相)は、全体で日量約150万バレルを既に削減し、OPEC(石油輸出国機構)と非OPEC加盟国が減産に乗り出したと明らかにしました。次回の会合は、3月後半の予定です。

注目される米のエネルギー政策

また、反対デモも行われるなか、トランプ大統領が就任しました。新政権の金融全般に対する政策、特に、エネルギー政策が注目されるところです。主要な人事等も原油価格に重大な影響を及ぼすことも考えられます。また、外国為替の動向も重要です。トランプ政権の施策次第では、ドル・株価は大幅安のリスクもあるかと思います。しかし、決定的な材料もないという、材料難、ニュース待ちといったところです。

原油価格を見る上で、これからのニュースに注意を払っていく必要があります。 ファンダメンタルはニュートラルですが、テクニカルでは、WTI価格は弱保合ですが、保合の下限の50ドルを割り込むと、弱気に推移することになりそうです。

《執筆者紹介》

林康史(はやしやすし)
立正大学経済学部教授。大阪大学卒。法学修士(東京大学)。メーカー、金融3業態を経て、現職。<著書・訳書>『改定版 基礎から学ぶ デイトレード』、『トレーダーの発想術――マーケットで勝ち残るための70の箴言』(訳)『株式投資 第4版』(共訳)『デイトレード』『マネーの公理』『運とつきあう』(以上、監訳)以上、日経BP社、『戦略的リスク管理入門』(監訳)勁草書房、ほか多数。最新刊は、『貨幣と通貨の法文化』(編)国際書院

【免責事項】

「週刊日産証券C X レポート」( 以下、本情報と略記) は、株式会社市場経済研究所が提供する一定の条件の下で執筆者が作成したレポートです。

利用者は、本情報を利用者ご自身でのみご覧いただくものとし、ご自身の判断と責任においてご利用ください。本情報は一定の情報を提供するものに過ぎず、特定の銘柄、金融商品、商品価格などについての投資・購買に関する助言や勧誘を目的としたものではありません。また、市場経済研究所は、投資助言・代理業を一切行っておりません。

利用者は、本情報に関して、第三者への提供や再配信、再配布、独自に加工すること、複写もしくは加工・印刷したものを第三者に譲渡または使用させることはできません。また、本情報のウェブページへのリンクは禁止します。その他、市場経済研究所が適当でないと判断する行為をした場合には、利用を停止させて頂くことがあります。

本情報の利用にあたり、利用者が故意または過失により、市場経済研究所および当該執筆者に対して、何らかの損害を与えた場合には、市場経済研究所等は損害賠償請求をすることがあります。

レポート
TOPへ