日産証券CXレポート

NY金、当面は米金利など外部要因に左右されよう

 

 2017年1月16日(月)
金融・貴金属アナリスト
亀井 幸一郎

ニューヨーク(以降NY)金は昨年、7月初めに1370ドル台の高値を見たものの、年末12月には一時1120ドル台まで上げ幅を削ることになった。それでも年足では4年ぶりに上昇(陽線)した。そして、年始2週間を経過し、堅調に推移している。年始以降1月13日までの上昇率は3.9%、値幅で44.5ドルの上昇となる(NY金先物中心限月の価格)。

FOMCで流れ変わる

前回2016年12月19日号で、「金価格の目先の動向を見る上での指標は、米長期金利(10年国債の相場=10年国債の利回り)」とした。大統領選でのトランプ勝利以降、次期政権の積極財政と大型減税に対する期待を映した、米長期金利の上昇と、それにともなったドル高は、そのまま金市場では金の売り要因となり、ファンドの買い建て(ロング)の手仕舞い売りや先安を読む新規の売り建て(フレッシュ・ショート)の流れを作り出した。

この流れが一巡したのは、予想通り0.25%の利上げが実施された12月の連邦公開市場委員会(FOMC)の翌日12月15日だった。金利を生まない金、さらにドル相場と逆相関性が強い金にとって、米金利の上昇とドル高はいわば天敵といえる。11月9日以降12月15日までのNY金は、値幅で143.7ドル、率にして11.3%の大幅な下げに見舞われた。この間、米長期金利は11月9日の1.862%から12月15日には一時2.64%まで急騰した。国際金市場の参加者、とりわけファンドは、ドル相場を見るとき、ドル指数(DXY)を見る。主要6通貨に対するドルの相対的強さを表すドル指数も、この間、95.88ポイントの安値から102.87ポイントまで急騰した。金の逆行は、この裏返しの現象といえる。

トランプ・ラリー、目先のピーク越す 

そして、年始以降ここまでのNY金の堅調展開は、同じ構図で説明がつく。米長期金利はFOMC明け翌日の12月15日がピークとなり、先週1月13日には2.381%にまで低下した。為替相場もドル円はまさに12月15日の118.66円が直近のピークとなり、114.44円に低下。ドル指数はややズレが出て年明け1月3日の103.82ポイントが直近の高値となり、その後は急落。12日には安値100.73ポイントまでみて、13日は101.24ポイントで終了した。米長期金利の下落、ドル安の中で金は反発となっている。

この点では、1年ぶりの利上げと2017年利上げ見通しの上方修正(2回から3回へ引上げ)を発表した12月のFOMCは、やはり「目先の材料出尽くし」ということになった。昨年12月15日が、いわゆる金利版“トランプ・ラリー”のここまでのピークということになる。同時に同じ日の金価格の安値(1124.3ド)は、NY金の下値となった。

ちなみに1月3日のドル指数の103.82ポイントは2002年12月以来となるドル高水準を示す値でもある。いうまでもなく、米長期金利の上昇とそれを映すドル高は、米国経済にとっては引き締め効果をもたらす。そのままFRBによる利上げに匹敵する環境が生まれていることを意味する。

他力本願の展開か

トランプ次期政権に対する期待が先行する形で生まれた環境が、金市場の変動幅を大きくした。次の節目は1月20日の大統領就任日となりそうだ。新政権の正式スタート時に示される政策方針がどのようなものになり、市場がそれをどう評価するか。債券相場(すなわち長期金利)やドルなど他の市場の反応を見ながら金市場はそれらを投影する他力本願的な展開を続けることになりそうだ。金市場の独自要因を映した展開は、この春4月以降のインドの需要期やフランスの大統領選などのタイミングを待つことになろう。

グラフ NY金価格の推移
NY金価格の推移

《執筆者紹介》

亀井 幸一郎(かめいこういちろう)
マーケット ストラテジィ インスティチュート代表取締役、金融・貴金属アナリスト、1979年中央大学法学部法律学科卒業。山一證券に8年間勤務後、1987年投資顧問会社で日本初のFP会社でもあるMMI入社。1992年ワールド ゴールド カウンシル(WGC/本部ロンドン入社。企画調査部長として経済調査、世界の金情報の収集、マーケット分析、市場調査に従事。2002年現職。「急騰前に金を買いなさい」(廣済堂出版)など

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