日産証券CXレポート

原油需給、徐々に引き締ろう

 

 2017年1月10日(火)
㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤 敏憲

原油価格は11月半ばの安値から12月末にかけて20数%上昇した。OPECとロシアなど主要産油国が協調減産に合意したことが上昇理由の一つと考えられるが、減産の効果はまだ発揮されていない。需要が伸び悩んでいることもあり、この間には原油および石油製品の需給などファンダメンタルズにまだ目立った変化はみられない。

変調した原油、為替、株式相場

11月以降に相場が変調したのは、原油だけでなく、ドルがユーロや円など他通貨に対して値上がりしているほか、株式相場も上昇している。これらの事実は、今回の原油価格の上昇は、産油国の協調減産など原油個別の原因によって生じたのではなく、経済や金融市場の変化や、アメリカのトランプ次期政権への期待や影響なども変動要因になっているものと考えることができる(グラフ1参照)。

原油相場は、2007年9月~2008年11月及び2012年1月~2015年7月にドル・ユーロ為替レートと強い相関関係が見られ、為替レートが1%変動した際に原油価格は前者では3%程度、後者では2%程度変化していた。

原油、為替と相関性なくなる

原油は大半がドル建てで取引されているので、他通貨市場における価格に影響を及ぼすドル為替レートが原油価格に影響することは理論的に説明がつかなくはない。ところが、原油と為替との間に2015年8月以降は相関性がみられなくなり、特に2016年11月以降はドル高の局面で原油価格が上昇するなど、ドル建て商品の値動きとしては合理的に説明することが難しくなっている。

一方、原油と為替との相関性が崩れていた2008年10月から2011年1月にかけて原油と株式との間に強い相関性が確認されたが、2016年1月以降も原油と株式相場との間には相関性が見られる(グラフ2参照)。

もちろん需給や経済性などのファンダメンタルズも原油相場に影響を及ぼす。原油価格が急騰した2007年~2008年半ばには原油の需給も引き締まっており、急落した2008年後半及び2014年半ば以降は世界同時不況によるエネルギー需要の減退、北米におけるシェールオイル・ガスの増産 、天然ガスや再生可能エネルギーへの需要シフトなどの影響で原油の需給が緩んでいた。

プログラム売買など変化すでに始まる

2017年は、景気が失速しない限り、主要産油国の減産によって原油の需給は徐々に引締まっていくと予想される。ファンダメンタルズが変化するのなら、原油相場に影響を及ぼすCTA(商品投資顧問)等によるプログラム売買の構成要素や係数も変わるはずで、その変化はすでに始まっていると考えられる。

グラフ1 NY原油先物期近価格と株価指数SP500の推移(週足、2003年1月~)
NY原油と株価指数

グラフ2 NY原油先物期近価格と株価指数SP500の推移(日足、2016年1月~)
NY原油と株価指数 日足

《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)。

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