日産証券CXレポート

原油、減産合意の実効性を保てるか

 

 2016年11月28日(月)
立正大学経済学部教授
林康史

再びレンジ圏内へ

8月半ばから続いていた1バレル43~48ドルのレンジを上抜けたかのように見えたWTIですが、10月19日に51.93ドルの高値を付けた後、再び、レンジ相場へ逆戻りしました。これは減産合意の実効性に対する不透明感が出てきたことや、EIAの月報で公表されたOPECの10月の産油量が3,383万バレルと非常に高い水準であったことから、供給過剰に対する不安が高まったことによります。

減産合意に向けた協議の行方

10月28日にOPEC内での専門家会合が行われましたが、減産合意の詳細につい進展はありませんでした。決まったのは“再度会合を開くということだけ”という状況であったことから、協議の先行きに不透明感が強まっています。減産合意が形骸化しかねないとの懸念から、原油価格は減産合意した9月末時点の価格までいわゆる「いってこい」の形になったわけです。

翌29日、OPECはロシアなど非加盟国の産油国と協議を行いました。その際、ロシアの姿勢は当初報じられていた「減産合意に協調する」ということではなく、あくまで「減産ではなく、増産を凍結する」ということのようです。それに加え、非加盟国の多くは、「まずOPEC内で協調して生産を抑えることを条件に減産に動く」と主張したとのことです。

先ほど述べた、OPEC内で協議が進んでいないということが、今後の非OPEC諸国との協調についても影響を及ぼすことになりそうです。その後、主要産油国が減産実施に向けて積極的な姿勢を見せたことでWTIは少し値を戻しましたが、まだまだ方向感は不安定です。

意外な結果だった米国大統領選挙

世界中が注目していた米国大統領選挙ですが、大きなサプライズが起きました。開票が進むにつれて、トランプ氏が優勢との報が入ると大きく円高が進み、一時は101円台前半を付けました。しかし、急速に戻し、結局は始値を上回るドル高水準まで行きました。その後はドルの年内利上げの可能性が高まったこともあって、113円を超える水準までドル高が進みました。

ドル高自体は産油国にとっては歓迎すべきことかもしれませんが、あまり急激にドル高が進むようだと、原油価格の上値を抑えかねません。外国為替相場のほうも、引き続き注意していく必要があります。中長期的には、トランプ政権のエネルギー政策が重要になりますが、現在のところ、市場は物価上昇の方向性を読み取り始めるのではないかという感触と思われます。

今後の展開

今後の相場は11月30日に開催されるOPEC総会次第といえます。どこまで数字等の詳細を詰められるかにかかっており、それによって、総会に併せて予定されている非加盟国との会合の成否も決まってくるとみています。ゴネ得の問題を先送りしてとりあえず減産合意に取り付けたサウジアラビア(OPEC)が、今後どのように協議を進めていくかが注目されます。それまで、目先は、これまでも何度かあったように、少しの材料で価格が右往左往する、方向感のない動きになるでしょう。

非加盟国との協調の前提であるOPEC内で歩調を合わせるという部分で早速綻びが生じており、すでにWTIは減産合意前の価格水準に戻っています。今後の協議の結果次第では減産合意以前と同じように、下落基調で推移することとなるとみています。

《執筆者紹介》

林康史(はやしやすし)
立正大学経済学部教授。大阪大学卒。法学修士(東京大学)。メーカー、金融3業態を経て、現職。<著書・訳書>『改定版 基礎から学ぶ デイトレード』、『トレーダーの発想術――マーケットで勝ち残るための70の箴言』(訳)『株式投資 第4版』(共訳)『デイトレード』『マネーの公理』『運とつきあう』(以上、監訳)以上、日経BP社、『戦略的リスク管理入門』(監訳)勁草書房、ほか多数。最新刊は、『貨幣と通貨の法文化』(編)国際書院

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