日産証券CXレポート

原油需給は若干、タイト(引き締まり)に

 

 2016年10月31日(月)
立正大学経済学部教授
林康史

レンジ相場を上抜けか

OPECの非公式会合での減産合意以降、原油価格は上昇基調で推移しています。WTIは、8月半ばから続いていたレンジ相場の上値である48ドル近辺を超えた後、さらにじりじりと価格を上げ、10月19日には、51.93ドルの高値を付けました(6月9日の年初来高値である51.67ドルとほぼ同水準)。

減産合意後のOPEC内部の事情

OPEC非公式会合で日量3,250~3,300万バレルに生産量を制限する合意に至りましたが、実現に向けてはまだまだ紆余曲折がありそうです。OPEC月報によると、減産を免除されているイラン、リビア、ナイジェリアの3カ国は、9月の日量あたりの原油生産量を増やしていますが、ここまではサウジアラビアも想定していたことでしょう。

しかし、これに加えてイラクも増産しており、さらにルアイビ・イラク石油相は減産免除を求める発言をしています。イラクが減産を受け入れない可能性が出てきており、今後の不安材料と言えます。

非OPECとの協調

また、今回の減産合意をどの程度実効的なものにできるかは、OPEC加盟国内の連携だけでなく、OPEC非加盟国との協調が鍵となってきます。世界エネルギー会議(WEC、10月9~13日にトルコ・イスタンブールにて開催された)では、ロシアのプーチン大統領が「OPECによる減産合意にロシアも加わる用意がある」と発言しました。この発言は、OPEC減産合意に対するロシアの協力姿勢に懐疑的だった市場関係者にもサプライズとなり、上述したようにWTI価格が50ドルを超える一因にもなりました。

しかし、その2日後に行われたOPECとロシアによる会合では、ロシア側が「減産ではなく、増産凍結を検討している」と主張したとも報じられ、非OPECとの協調についても一筋縄ではいかない状況がうかがえます。10月下旬に再度話し合いの場が持たれるとのことですが、ここで一定の成果が得られなければ、OPEC減産合意の意義が薄れてしまうことになりかねません。

米国大統領選挙と外国為替相場

現在、市場の注目材料は、11月8日の米国大統領選挙です。クリントン氏とトランプ氏のいずれが勝っても円高ドル安というのがマーケットのコンセンサスのようです。ただ、トランプ氏が勝利した場合、不安な要素が大きく、さまざまなリスクを回避するという理由から、一時的にせよ、大きくドル安に動く可能性があると思われます。ドルの年内利上げの可能性とともに、外国為替相場にも注意していきたいところです。

外国為替相場と原油価格の関係については、産油国はドル安を嫌う傾向があります。産油国にとっては、ドルが下落すれば、購買力が低減する(産油国が輸入する場合、ドルが安くなった分だけ、例えば、欧州や日本への支払いのドル価は増える)ので、原油安の影響が強く出ることになるからです。今後のドルの動きにも注意が必要です。

今後の展開

石油価格がどの方向に向かうのかは、11月30日に行われるOPEC総会にて決まる各国の生産水準(減産量)の決定にかかっていると思われます。しかし、今回のイラクのように、イランのゴネ得を見て、それに右へ倣えする国が出てくるとなれば、一枚岩の減産体制を築くことは困難でしょう。OPEC総会の結果によっては急な下降トレンドに入ることも考えられます。

一方、国際エネルギー機関(IEA)の月報によれば、2016年の世界石油需給の伸びは日量120万バレルとなっています。これを基にするならば、サウジアラビアとロシアの減産のみで達成可能な数字です。今回のサウジアラビアの対応を見ると、ありえなくはなさそうです。その他、米国原油在庫がここにきて急激に減少しており、5億バレルを大幅に割り込んでいます。これらを加味すると、現状、需給は引き締まってきていると言え、下値も限られてくるでしょう。

OPEC総会次第では急落の可能性もあるものの、基本的なシナリオは、マーケットは様子見で、若干の強もちあいになると思われます。

《執筆者紹介》

林康史(はやしやすし)
立正大学経済学部教授。大阪大学卒。法学修士(東京大学)。メーカー、金融3業態を経て、現職。<著書・訳書>『改定版 基礎から学ぶ デイトレード』、『トレーダーの発想術――マーケットで勝ち残るための70の箴言』(訳)『株式投資 第4版』(共訳)『デイトレード』『マネーの公理』『運とつきあう』(以上、監訳)以上、日経BP社、『戦略的リスク管理入門』(監訳)勁草書房、ほか多数。最新刊は、『貨幣と通貨の法文化』(編)国際書院

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