日産証券CXレポート

原油、今後の動向を決定か―非公式会合の行方

 

 2016年10月3日(月)
立正大学経済学部教授
林康史

レンジ相場が続く

前回(4週間前に)、アルジェリアで開催されるIEFに併せて行われるOPECの非公式会合までは、各国の要人の発言を材料にある程度上下するだろうと述べましたが、その後の価格は各国要人の発言によって上下しました。ベネズエラのマドゥロ大統領の「産油国の間での生産調整は合意に近づいている」発言で、合意の可能性が高いとの観測から、じわりと価格は上昇したり、27日にウィーンで行われたサウジアラビアとイランの事前協議において、「両者の間にまだ溝がある」との報道が広まると、下落したりといった、方向感のない動きが続き、WTIは、8月半ばから43~48ドルのレンジ相場となっています。

非公式会合 ~ 約8年ぶりの減産に合意

今回行われた非公式会合は、本来、各国の増産凍結へ向け行われるはずのものでしたが、各国の思惑が錯綜するなか、「合意を取り付けたい」ことから、イランには増産は認めたうえで、OPEC全体として原油生産を日量3250万~3300万バレルに減らすことで合意しました(詳細は今後つめられるようで、まだ注意は怠れません。また、減産と言っても2パーセント弱でしかないことも留意しておく必要があります)。

会見後の記者会見において、OPEC議長のサダ・カタールエネルギー相は非加盟国のロシアとも生産調整を協議する方針を示しました。11月のウィーンでの会合まで各国の目標生産量は決まらないとのことですが、マーケットにはサプライズでした。

事前の予測と異なる結果が出た場合にはそのインパクトも強くなります。今回の場合は、原油価格は27日終値の44.67ドルから、28日には47.45ドルをつけ、約6パーセント上昇しました。レンジの上限まで急伸した格好です。

12月利上げ織り込み済みもなお予断許さず

12月の利上げについては、金市場を含め、広く市場全般で織り込み済みとなっており、現時点でも市場関係者の読む可能性は50%以上となっている。率直にいうなら、「FRBは12月に“利上げしたい”と宣言しが、それは“利上げする” と同意ではない」ということになろう。

以前であれば、そのまま利上げに突き進むことになったのだろうが、イエレン議長が記者会見で認めたように、失業率が数ヵ月にわたり5%を下回っていても「景気が現時点で過熱している」とはみていない。むしろ「生産性の伸びが鈍く、非常に大きな懸念事項」となっているということだ。つまり、議長自身にも利上げに関し“揺らぎ”がある。それを市場も見透かしている。

世界中の市場関係者が見守った8月のジャクソンホールでの議長の講演は、冒頭の「金利引き上げの論拠はここ数ヵ月で補強されたと思う」という内容に多くの焦点が当てられた。しかし、講演のメインテーマは、先行きに待ち構えるであろうリッセッション(景気後退)に対応して、FRBとしてどういう手段を講じることができるかという点にあった。議長は、これまでの量的緩和策は有効とした。

合意は生産国の焦り

合意の背景は、「自律反転が終了し、石油価格が40ドルを割って再び下落し始めるのではないか」との産油各国の焦りがあると思われます。また、後述するように、軟調なドル相場も後押ししたかもしれませんが、サウジアラビアの方針転換を示している可能性もあります。

つまり、サウジアラビアが盟主としての役割を果たす、供給管理の強化へと舵を切ったかもしれないということです。今年に入って二度、交渉が物別れに終わっていたOPECは、内部でも足並みが揃わず、影響力の低下が懸念されていましたが、今回、合意を取り付けたことで、OPEC、なかんづくサウジアラビアの存在感が再び増してくるということかもしれません。

ただ、供給管理といっても、それが簡単な状況ではないことは、これまで見てきたとおりです。もしかすると、サウジアラビア国内での政争が理由かもしれません。これもウォッチが必要です。また、サウジアラビアが「生産量を落としても価格が上がればよい」とのバランスでの損得を考えたうえで判断したのだとは思いますが、イランだけを特別扱い(リビア、ナイジェリアはテロの影響で減産していた分を戻すという意味なので、イランだけが特別扱いということになります)するというのであれば、長期的には維持するのは無理があります。

外国為替相場との関係

ドル相場が原油に与える影響も触れておきます。産油国は海外からの財の購入等は、基本的にはドル建てです。ドルが上昇すれば、その分、購買力が増加するので、多少の原油安も許容できるということになります。ドルが下落すれば、購買力は減少するので、原油安ではいっそう困るということになります(過去、サウジアラビアは、原油の決済通貨についてドルの比率を下げることを交渉材料にしたこともありました)。

9月20日~21日にかけて行われたFOMC(連邦公開市場委員会)において、追加利上げの先送りが決定されました。この結果を受け、ドル安の傾向が続いており、(非公式会合前まで)現状、原油価格の下値を支える必要性が高まっています。

今後の展開

今回の減産合意により、ある程度の期間、原油価格は上昇気味で推移すると思われます

ただ、今回は大枠での合意に過ぎず、各国の産油量等の減産についての詳細は11月の定時総会で協議されることになっています。大局は、それらが具体的に見えたときに決すると思われます。

今回はイランの増産分を引き受け、大人の対応を見せたサウジアラビアですが、次回のOPEC総会でも今回のように上手にまとめ役になれるかに注目です。また、忘れてはならないことは、世界経済の視点からは、原油が供給過多だということです。減産合意が強固に、また、長期に行われるというものでなければ、その状況に変化はないということでしょう。大きく下落というリスクをともなっての上昇というところでしょうか。

《執筆者紹介》

林康史(はやしやすし)
立正大学経済学部教授。大阪大学卒。法学修士(東京大学)。メーカー、金融3業態を経て、現職。<著書・訳書>『改定版 基礎から学ぶ デイトレード』、『トレーダーの発想術――マーケットで勝ち残るための70の箴言』(訳)『株式投資 第4版』(共訳)『デイトレード』『マネーの公理』『運とつきあう』(以上、監訳)以上、日経BP社、『戦略的リスク管理入門』(監訳)勁草書房、ほか多数。

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