日産証券CXレポート

金、FOMCを控え、上値は重いが下値も堅い

 

 2016年9月12日(月)
(株)資源・食糧問題研究所
代表 柴田明夫

ニューヨーク金相場は8月以降も1オンス=1320~1370ドル台で推移している(図1)。当面の市場の関心は、米連邦準備理事会(FRB)が9月20~21日に開催する米連邦公開市場委員会(FOMC)の行方だ。追加利上げとなれば、市場では主に①金利上昇→ドル高、②金利上昇(債権安)→景気や企業の業績悪化→株安―の2つの経路から投資家のリスクオン(リスク回避)姿勢が強まり、安全資産としての金が買われやすくなる。 逆に利上げが見送られれば、市場はリスクオフとなり、投資家のリスク回避姿勢が後退(積極的にリスクを採る姿勢が強まる)。株や債券が買われる一方、金は売られることが多い。

7月は懸念材料が出て利上げ見送り

FRBの金融政策の判断となるのは、主として逐次発表される米経済指標の内容だ。前回7月26~27日のFOMCでは、追加利上げは見送られた。雇用統計は市場予想を上回る数字となったものの、6月24日の英国のEU離脱(ブレグジット)決定を受け、市場に先行き不透明感が広がったためだ。ドルが対ユーロで上昇傾向を辿っていることも、投資家にとってドル建ての金価格を割高にするため、金にとっては弱材料だ(図2)。

加えて、7月末に発表された4~6月期の米国内総生産(GDP)速報値が、前期比年率1.2%増と、市場予測の同2.6%増を大きく下回る内容であったことから、市場では「追加利上げは早くても12月(13~14日)のFOMC」との見方が大勢となり、金は8月上旬にかけて1370ドル台の高値を付けた。

早期利上げ説も台頭

しかし、9月に入って、市場では、早期利上げを予想する声も聞かれるようになり、金は売り優勢となった。きっかけは、これまでハト派(利上げに慎重)とみられていたローゼングレン・ボストン連銀総裁が9日の講演で、「利上げを待ちすぎれば不動産などの過熱リスクが増す」と強調。「早めの利上げを緩やかに重ねることが必要」との見方を示したことだ。これにより市場には「9月追加利上げ観測」が再燃。金利の付かない金の魅力が薄れ、金は1320ドル台まで売られる格好となった。

果たしてFRBは9月のFOMCで追加利上げに踏み切るのだろうか。ちなみに、FOMCの構成メンバーは、イエレン議長、フィッシャー副議長ほか5人の理事と5人の地方連銀総裁の計12人である。ただ、いまは理事2名が空席のため、議決権は10名。このうち、いまのところ早期利上げを主張しているのは、上述したボストン連銀のローゼングレン総裁はじめ、7月のFOMCの際に利上げを求めたカンザスシティ連銀のジョージ総裁のほか、クリーブランドおよびセントルイス連銀の両総裁の計4名で、依然、「利上げ慎重派」が多い。

利上げはやはり先送りか

こうしたなか、ニューヨーク株式市場で9日、ダウ工業株価が前日比394ドル急落した。一部FRB理事の早期利上げ発言を受けて、欧米の長期金利が急上昇(債券価格が急落)したことで企業業績が悪化しかねないとの見方から、投資家のリスクオン姿勢が強まり、株式への売りが加速したためだ。やはり、9月の追加利上げは先送りされる可能性が高い。

一方、株価とは対照的に、「早期利上げ観測」から1320ドル台まで売られていた金は、1330ドルまで買い戻された。改めて金の底堅さが確認できた格好といえよう。

(図1)
NY金および円/ドル相場の推移

(図2)
ドルユーロの比率の推移

《執筆者紹介》

柴田明夫(しばたあきお)
資源・食糧問題研究所代表 1976年東京大学農学部卒。同年丸紅入社。鉄鋼第一本部、調査部等を経て、2002年に丸紅経済研究所主席研究員。同副所長を経て、2006年同所長。2010年同代表。2011年に資源・食糧問題研究所を設立、代表に就任。<主な著書>『食料争奪』(日本経済新聞出版社)、『水戦争』(角川SSC新書)。

【免責事項】

「週刊日産証券C X レポート」( 以下、本情報と略記) は、株式会社市場経済研究所が提供する一定の条件の下で執筆者が作成したレポートです。

利用者は、本情報を利用者ご自身でのみご覧いただくものとし、ご自身の判断と責任においてご利用ください。本情報は一定の情報を提供するものに過ぎず、特定の銘柄、金融商品、商品価格などについての投資・購買に関する助言や勧誘を目的としたものではありません。また、市場経済研究所は、投資助言・代理業を一切行っておりません。

利用者は、本情報に関して、第三者への提供や再配信、再配布、独自に加工すること、複写もしくは加工・印刷したものを第三者に譲渡または使用させることはできません。また、本情報のウェブページへのリンクは禁止します。その他、市場経済研究所が適当でないと判断する行為をした場合には、利用を停止させて頂くことがあります。

本情報の利用にあたり、利用者が故意または過失により、市場経済研究所および当該執筆者に対して、何らかの損害を与えた場合には、市場経済研究所等は損害賠償請求をすることがあります。

レポート
TOPへ