日産証券CXレポート

米国の原油生産底入れも戻りは鈍い

 

 2016年8月22日(月)
㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤 敏憲

増加する米、加の石油リグ稼働基数

米国の石油サービス会社、ベーカーヒューズが毎週集計し公表している米国の石油リグ(石油掘削装置)の稼働基数は、8月19日付のデータで前週比10基増の406基となった。8週連続の増加で、最も稼働基数が少なかった5月17日時点の316基と比べると90基増加し、今年2月以来約半年ぶりに400基台を回復した。(グラフ1参照)また、米国のEIAが公表している週次統計によると、8月12日時点の米国の原油生産量は、前週比15万2,000バレル増の日量859万7.000バレルとなり、直近のボトムだった6月1日時点の842万8.000バレルと比べると16万9,000バレル増加している。さらに、カナダの石油リグの稼働基数の回復はより顕著で、今年4月8日の稼働基数はわずか8基に過ぎなかったが、8月19日時点では65基まで増加している。

尺度変えると異なる評価

このような解説だけを読むと、米国およびカナダの原油生産は底入れし、生産量が拡大に向かっているように思える。ところが、比較期間や尺度を変えると評価は異なってくる。

例えば、米国の石油リグの稼働基数の直近のピークは14年10月10日に記録した1,609基で、8月19日時点の稼働基数406基はその4分の1に過ぎない。前年の同時期の674基と比べても268基、約40%減少している。(グラフ2参照)

8月12日時点の原油生産量も15年6月5日時点の960万4,000バレルと比較すると100万7、000バレル、10.5%減少している。一方、カナダの石油リグの稼働基数も14年10月3日の243基と比べると約4分の1に過ぎない。

カナダでは、今春、産油地域の西部アルバータ州で史上最大級の大規模な山火事が発生していた影響で、産油設備の多くが操業の停止を余儀なくされていたため、稼働基数の戻りがより顕著になっていたのである

統計の見方に要注意

これらはグラフで見れば明らかで、米国の原油生産は、原油価格の上昇や生産コストの低減などによって、底入れしたとはいえるものの、その戻りは鈍いと評価するのが妥当と思われる。統計は、どの時点と比較するかによって、変化の見方が異なってくるのだが、商品相場の地合いによって価格への影響が異なってくることには注意する必要があると思われる。

(グラフ1)
石油リグの稼働基数

(グラフ2)
石油リグの稼働基数

データ出所:EIA、ベーカー・ヒューズ社

《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)。

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