日産証券CXレポート

原油 弱もちあい続こう 2016年8月8日(月)

 

立正大学経済学部教授
林 康史

原油が反落

原油価格が再び下落基調となっています。6月9日に51.67ドルの直近での高値を付けた後、BREXIT(英国のEU離脱のこと。6月23日の国民投票で決定。世界経済には悪材料との見方で、原油にとっては弱材料とみなされている)後も流れは変わらず、8月3日には40ドルを下回り39.19ドルを付けました。ここしばらくの上昇については、本欄でも、「オーバーシュートしすぎた相場が自律反発したということで、状況としては大きな変化はない」と述べてきましたが、自律反転は6月にいったん終わったと考えられます。

原油相場の大局観

米国のWTIは、2014年の夏までは1バレル当たり100ドル超でしたが、2014年の秋にOPECが減産を見送って以降、下落を始め、40ドル台を見て、2015年央に60ドル台まで戻しました。しかし、その後、再び下落を開始し、今年に入って20ドル台半ばでダブルボトムを形成し、上昇していたというところです。

※ 1月20日の26.19ドルと2月11日26.05ドル。2つのボトムの間のピークとショルダーを結ぶネックラインが35ドル程度でしたので、ターゲットは45ドル近辺以上ということが考えられました。それをいったん達成したというところです。

その間のOPEC(石油輸出機構)はじめ産油国の動向は次のようなものでした。
OPECは2015年12月以降、日量3,000万バレルの生産上限を取りやめ、各国の裁量に委ねているという基本的な状況に変化はありません。4月18日の産油国会議は、増産凍結に反対のイランが不参加ということもあり、増産凍結合意に至らず、6月2日のOPECの総会でも、合意に至りませんでした。今さら生産上限を復活させて、価格が若干上昇したところで、シェールオイルの生産が増えることが予想され、「他人を利するだけ」という基本的な認識に変化はなかったということでしょう。そもそも相場が上昇しているのだから、増産凍結の合意は要らないということでもありました。

こうして、値動きと産油国の状況を比べると、増産凍結の合意(への政治的動き)は、原油の価格推移とはまったく無関係だったということがわかります

シェールオイル

年初から、「産油国間での減産への合意に至らないのは、我慢比べだ」と述べてきました。我慢比べ(=「減産しない」)のなか、イランは予定通りに増産。一方、そうした状況でも原油価格は上昇を続けていました。

そして、原油価格が上昇した結果、シェールオイルが採算に見合うところまできたので、生産が増えることになりました。原油価格の上昇が確認された4月半ばあたりから、稼動リグ数も増加しています。

今後の原油相場の方向性

米国がドライブシーズンを迎えてガソリンの需要が増えるなか、在庫量はあまり減っていません。EIAのデータでは、原油在庫は過去5年平均を10%近く上回っています。足元の需給も非常に緩んでいるといえます。

上述したように、長期的には、政治的に産油量が減ることは、当面、考えにくく、自律反転で価格が上昇すればシェールオイルが増産され、再び価格が下落する動きになっています。この状況に特段変化はなく、しばらくは、弱保合(よわもちあい)が続くと考えます。

《執筆者紹介》

林康史(はやしやすし)
立正大学経済学部教授。大阪大学卒。法学修士(東京大学)。メーカー、金融3業態を経て、現職。<著書・訳書>『改定版 基礎から学ぶ デイトレード』、『トレーダーの発想術――マーケットで勝ち残るための70の箴言』(訳)『株式投資 第4版』(共訳)『デイトレード』『マネーの公理』『運とつきあう』(以上、監訳)以上、日経BP社、『戦略的リスク管理入門』(監訳)勁草書房、ほか多数。

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