日産証券CXレポート

ガソリン国内店頭価格、急騰の背景

 

 2016年7月25日(月)
㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤 敏憲

3月下旬から上昇傾向で推移していたガソリンの国内店頭価格が、6月に入って急騰した。資源エネルギー庁が毎週公表している石油製品価格調査によると、6月6日のレギュラーガソリンの店頭価格(消費税込み価格)の全国平均は、前週比2.6円高の1リットル122.5円となり、年初来の高値をつけた。6月20日には124.0円まで上昇し、3月7日につけた年初来安値からの上昇幅は12.1円に達した。

上昇の主因は原油高

3月から6月にかけてガソリンの店頭価格が上昇傾向で推移した主な理由は、原油コストの上昇によった。図のように、原油価格とガソリン市況は連動して動くことが多い。ところが、急騰の理由を原油コストの上昇だけで説明することはできない。店頭価格の上昇幅が原油コストの上昇幅を上回っており、原油価格が低下している週に店頭価格が上昇したケースもあったからだ。

激戦区での底上げが顕著

地域別にみると、6月には、特に安売りが横行していた激戦区で店頭価格の底上げが顕著にみられた。各地域の店頭価格を左右しているのは、最も安い価格で販売している業者、すなわち、製品の仕入価格が安いか、販売コストが低いか、コストを半ば度外視して政策的に安い価格で販売しているかのいずれかの状況にある販売業者と考えられる。

需給の締まりも一因

石油製品の卸売価格は、通常、石油元売からの仕入価格に比べて業者間転売価格(業転価格=スポット市況)の方が安い。スポット相場と原油コストとの値差であるクラッキングスプレッドは、需給の影響を受けて変動するので、6月には需給が引き締まっていたこともスポット相場、並びに、店頭価格の上昇に影響していたと考えられる。

事後調整の廃止も影響

また、6月の上昇には、一部元売りが卸売価格の事後調整を廃止したことも影響していた。事後調整が廃止されたことで、販売時点での仕入コストに従って販売するようになったと考えられるからだ。ただ、事後調整廃止の影響は、東京商品取引所の市況にはほとんど反映されていなかった。

このような事情から、店頭価格上昇には、国内流通量の大半を供給している石油元売の販売政策が直接的(需給)、間接的(事後調整)に影響を及ぼしていることが判明したと考えられる。

SS店頭小売価格の推移

チャート
(出所)石油情報センター、資源エネルギー

《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)。

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