日産証券CXレポート

原油価格の急騰洛における経験則 2016年6月20日(月)

(株)伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤 敏憲

投資家が原油市場に本格的に参入するようになった1990年代末以前に原油の価格が大きく動いたのは、4回あった。1973年10月に勃発した第四次中東戦争を契機とした第一次オイルショック、1978年10月にイランの石油産業労働者によるストライキに端を発したイランの政変、1980年9月に勃発したイラン・イラク戦争によっておきた第二次オイルショック、1990年8月のイラクのクウェートと侵攻(いわゆる湾岸紛争)の時である。

原油生産量の一時的減少で急騰

いずれも原油の生産量が一時的に大きく落ち込んだことが原油価格急騰の原因だった。第一次オイルショック時にはOPEC加盟国のうちペルシア湾岸の6カ国が原油公示価格を1バレル3.01ドルから11.65ドルに引き上げ、第二次オイルショック時には1980年12月に開催されたOPECのバリ島会議で原油の上限価格が41ドルに設定され、10ドル強で推移していた原油価格が34ドルまで急騰した。湾岸紛争時には10ドル強から40ドルに上昇し、第二次オイルショック及び湾岸紛争後には、戦争終結後、原油価格はそれ以前の水準まで低下した。(グラフ参照)

NYMEX原油先物期近価格の推移
チャート

供給不安がない中で高騰・下洛

1990年代末以降は、オイルショックや湾岸紛争時のように原油の供給不足が不安視されることのない状況下で原油価格が何度も高騰・下落を繰り返している。1990年代末以降のNYMEXのWTI原油の先物期近価格の動きを見ると、1999年2月から2000年1月にかけて1バレル11ドルから36ドルに上昇。2001年11月に17ドル台まで下落した後、2003年3月に38ドルまで上昇。同年4月に25ドルまで下落してから上昇傾向に転じ2006年8月には77ドルまで高騰。2007年1月に49ドルまで下落した後に急騰し2008年7月に147ドルの史上最高値をつけた後、リーマンショックの影響などで急落。2009年3月に33ドルまで低下して反発し、2011年には114ドルまで上昇した。

1990年代末以降の高値、安値を経済性の観点で合理的に説明することはできない。それぞれの時点で、安値はコスト的に必要な供給量を維持することが難しい水準を著しく下回り、高値では需要に影響が生じる水準を大きく上回っていたからだ。

高値と安値の差は3~4倍

ところが、高値と安値の差は、2001年11月から2003年3月にかけての上昇局面を除いて、いずれも3倍から4倍にきれいに収まっている。私は、この価格変動幅には経験則が働いていると考えている。経験則には経済合理性はないが、経験則を参考にしている投資家が少なからず存在しているからだ

ちなみに、今年2月につけた安値は26ドル、その3倍から4倍は78ドルから104ドルとなる。

《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)。

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