日産証券CXレポート

不透明感が広がる中、安全資産としての金に注目

2016年6月20日(月)

(株)資源・食糧問題研究所
代表 柴田明夫

金が再び上昇している。NY金(期近)は、5月2日に1オンス=1304ドルと昨年(2015年)1月21日以来の高値を付けた後、急反落し、5月末には一時節目の1200ドルを割り込んだ。しかし、6月に入ると再び上昇に転じ、17日には一時1318ドルと今年の最高値を更新し、終値ベースでも1300ドル台を回復する動きにある(図1)。

図1
チャート

これには主に、①米ドル安/円高、②英国のEU(欧州連合)離脱懸念、③原油価格の上昇―の3つの要因がある。

米FRBの追加利上げ観測の後退は強材料

1つ目は為替市場でドル安/円高が進んだことだ。6月3日に発表された5月の米雇用統計で、非農業部門就業者数が前月比3.8万人増に止まり、市場が予想していた15~16万人増を大幅に下回った。

これを受けた市場では、FRB(米連邦準備銀行)の早期利上げ観測が後退し、市場でドル売り・円買いが加速した。6月14~15日の連邦公開市場委員会(FOMC)では、追加利上げが見送られ、次回7月26~27日のFOMCでも利上げは困難で、「早くても11月」との見方が広がっている。

英国のEU離脱の動きも金の魅力増す

2つ目は、6月23日に国民投票が行われる英国のEU離脱問題が欧州の将来不安を広げていることだ。このため、投資家のリスク回避姿勢から安全資産である金の魅力が強まっている。

ブレグジット(Brexit)といわれる英国のEU離脱に対する警戒感は日増しに強まっている。仮に投票で残留派が勝利したとしても、問題の争点である英国民の移民に対する懸念が払拭されるわけではなく、離脱派の勢いが弱まることはあるまい。

離脱派の主張は、①移民によって自分たちの文化や伝統が脅かされる(アイデンティティ危機)、②税金を払っていない移民たちが無料の医療給付や児童手当といった社会福祉費が支払われる(財政負担の問題)、③移民によってその土地の労働者から雇用機会が奪われる―といったもので、根は深い。

一方、英国がEUを離脱した場合、フランス、ドイツ、オーストリア、ギリシャの離脱派に波及し、離脱のドミノ現象が起こりかねない。こうした急速に高まるEUの将来に関する不透明感を映して、対ユーロでのドル高が進む、総じて金も買われる展開となっている(図2)。

図2
チャート

金と原油の相関性が回復へ

3つ目は、最近の原油高がある。原油が30ドルを割り込むような局面では、油価低迷リスクから金が買われ、原油と金は逆相関関係を示したが、原油が50ドル近辺まで戻ったことで、原油と金はかつての純相関関係を取り戻しつつあるといえよう。

英国のEU離脱が当面回避されれば、市場はリスクオフとなり、金は一旦、売られる場面があろう。ただ、①②③に絡む長期的な不安が残ることから、その後は金は再び買い戻され、1300ドル台での上値を試すことになろう。

《執筆者紹介》

柴田明夫(しばたあきお)
資源・食糧問題研究所代表 1976年東京大学農学部卒。同年丸紅入社。鉄鋼第一本部、調査部等を経て、2002年に丸紅経済研究所主席研究員。同副所長を経て、2006年同所長。2010年同代表。2011年に資源・食糧問題研究所を設立、代表に就任。<主な著書>『食料争奪』(日本経済新聞出版社)、『水戦争』(角川SSC新書)。

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