日産証券CXレポート

原油状況、依然不変 2016年6月13日(月)

立正大学経済学部教授
林康史

OPECの産油上限

4月18日に行われた産油国会議では、イランの不参加等により増産凍結については合意に至りませんでした。

6月2日のOPEC(石油輸出国機構)総会でも、「合意に至らず」という結果に終わりました(OPECは昨年の12月以降、日量3000万バレルの生産上限を取りやめ、各国の裁量に委ねている状態でしたが、最近の原油価格の低迷等から、価格下支えのために生産上限を復活させるか否かという点が今回の総会での注目点でした)。

増産凍結に反対して産油国会議にも不参加だったイランが、今回も反対に回ったためです。

今さら生産上限を復活させて、価格が若干上昇したとしても、(原油価格が60ドルを越えてくれば、生産コストに見合うことから)シェールオイルの生産が増えることが予想され、「他人を利するだけ」という産油国を取り巻く環境は変わりません。基本は、これまで述べてきた状況は不変ということです。

合意するのであれば、OPECだけではなく、その他の産油国も縛るほうがよいわけですから、前の産油国会議で行うべきだったのは自明です。春以降、原油価格の上昇が見られるなかで、「とりあえず様子を見よう」ということだと思われます。

原油価格上昇の背景

米国のWTIは、2014年の夏までは1バレル当たり100ドル超でした。その秋にOPECが減産を見送って以降、下落を始めました。40ドル台を見て、2015年央に60ドル台まで戻った後、再び下落を開始しました。

今春まで、大方の予想以上にオーバーシュートし下落したわけですが、さすがにシェールオイルの新規開発が見送られ、それにともなって在庫も減少するとの見方もあって、相場も自律反転が起こったと考えられます。状況としては、変化はないということです。

米国経済白書から見る石油の過去・現在・未来

材料や状況が変わっていない時は、少し視野を広げて、勉強しておくことにしましょう。

今回は、少し古いですが、いわゆる米国経済白書〈2015〉を紹介したいと思います。米国経済白書は、2013年までは、エコノミスト誌の増刊号として出されていましたが、今は、蒼天社出版から翻訳が出ています。

昨年の米国の経済諮問委員会年次報告の第6章は「エネルギー革命―低炭素エネルギー未来の経済的利益とその基盤」というもので、それを少し紹介したいと思います。米国政府は、どのように、米国の石油を取り巻く状況を認識し、これからの需給動向をどのように予想しているのかがわかります。

※  ※  ※

過去10年、米国では実質GDPが17%上昇したにもかかわらず、ガソリンの消費量は2%減少しています。さらに、非在来型の石油・天然ガス抽出技術が発明されたことにより、数十年にわたって減少してきた石油・天然ガスの生産量が増加に転じました。特に2008年以降、水平掘削、水圧破砕及び地震探査における技術革新等により、日量200万バレル以上も増産しています。

これは産油国上位15カ国の増産量のなかでも突出しており、2番目に多いカナダの3倍以上もの伸び率です。米国を除く産油国上位15カ国の増産量を平均すると日量20万バレル程度しかありませんので、いかに大きな伸び率かがわかります。

2014年時点において、同年後半に1バレル当たり60ドル台まで下落した背景として、米国の石油生産量がここ数年にわたって大幅に増大したこと、最近の世界の石油需要見通しが下方修正されたこと、そしてOPECが高水準の生産量を維持し、実際に4月から10月までの毎月の公式目標以上に生産を行った上に、11月にこの目標の引き下げを見送ったこと、等が挙げられています。

米国では石油のみならずシェールオイル等も増産しています。それらに加えて再生可能エネルギー等の代替品への移行、あるいは技術の進歩による燃費効率の向上等による需要の減少があります。

そして、これまで何度も触れてきましたが、OPECをはじめとする産油国同士でのドタバタ劇による供給過剰が加わったのが、現状ということでしょう。

また、2006、2010、2014年と年を追うごとに米国の石油消費量の予測値(~30年)が下方修正されていることは、覚えておくべき事柄でしょう。

《執筆者紹介》

林康史(はやしやすし)
立正大学経済学部教授。大阪大学卒。法学修士(東京大学)。メーカー、金融3業態を経て、現職。<著書・訳書>『改定版 基礎から学ぶ デイトレード』、『トレーダーの発想術――マーケットで勝ち残るための70の箴言』(訳)『株式投資 第4版』(共訳)『デイトレード』『マネーの公理』『運とつきあう』(以上、監訳)以上、日経BP社、『戦略的リスク管理入門』(監訳)勁草書房、ほか多数。

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