日産証券CXレポート

減少続く米国の原油生産 2016年5月30日(月)

(株)伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤 敏憲

米国の原油生産、ピーク比9%減

米国の原油生産が減少し続けている。米国DOE(Department of Energy)のEIA(Energy Information and Administration)公表の週次統計によると16年3月11日の週から11週連続で減少、16年5月20日の生産量は日量8,767千バレルと、15年6月5日の週に記録したピーク生産量の日量9,606千バレルに対して約9%減少している。

一方、米国の石油リグの稼働基数は、原油価格が1バレル約150ドルから30ドル台に急落した影響で08年から09年にかけて減少、その後、シェールオイル開発の急拡大を受けて14年秋まで増加傾向で推移したが、14年8月以降の原油価格の急落を反映して14年10月から減少傾向で推移している。16年5月20日の稼働基数は318。ピークの14年10月10日の1,609の約5分の1、前年同期と比べても半分以下になっている(グラフ1、2参照)。

シェールオイルの損益は50~80ドルか

リグの稼働基数の減少率に比べて、生産量の減少率の方がはるかに小さいのは、09年以降に新たに稼働し、14年10月以降に停止したリグの大半が在来型の油田に比べて規模が小さいシェールオイルのリグだったこと、稼働中のリグが原油価格の低下を補うため生産量を増やす対策を講じていることなどによると考えられる。ただ、生産量を増やす対策も限界に達しており、今後は、可採埋蔵量の減衰などによって生産量の減退が広がっていくと予想される。

シェールオイル開発のコストを回収できる損益分岐点の原油価格は、原油価格とリグの稼働基数との相関性から、1バレル50ドル~80ドル程度のプロジェクトが多いと推察される。損益分岐点は、人件費や一部の資材・機材の調達コストの低下などによって多少下がっていると予想されるものの、原油価格が50ドル程度に戻っても、リグの稼働基数が増えて、すぐに生産量が増えるとは考えにくい。

OPEC以外の産油国は生産能力減

探鉱・開発投資が減退し、リグの稼働基数が減少しているのは、米国に限らず、2000年代に入って原油価格が高騰してから開発が進められた新興産油国・地域に共通する動きである。先ごろ、大手投資銀行から2015年の石油発見量が1952年以来で最低だったとのレポートが公表されたが、これは、原油価格が急騰しても生産量が簡単に増えないことを意味している。原油価格が反発した理由の一つは、このようなOPEC以外の産油国の原油生産能力の減少によると考えられる。

グラフ1 原油生産とリグの推移
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グラフ2 原油生産とリグの推移
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《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)

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