日産証券CXレポート

金、マイナス金利の常態化は買い要因 2016年5月23日(月)

(株)資源・食糧問題研究所
代表 柴田明夫

追加利上げ見送りで、1,200ドル台後半でしっかり

NY金は5月以降、1オンス=1,200ドル台後半でのしっかりした動きとなっている(図1参照)。5月2日には一時1,306ドルと昨年(2015年)1月21日以来、1年4カ月ぶりの高値を付けたものの、5月19日には1,254ドルまで売られた。

5月初めにかけて金が買われたのは、4月26~27日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げが見送られためだ。図1に見るように、追加利上げでドル高となれば、ドル建ての金は割高感から売られやすくなる(ドル安は逆)。

政策金利も0.25~0.50%で据え置かれた。米連邦準備制度理事会(FRB)は会合後の声明で、「労働市場の状況は一段と改善したが、経済活動は減速した」とし、「緩やかなペースで拡大した」とした前回(3月16日)の声明から景気判断を下方修正した。

図1
チャート

GDPの増加減速で買われる

ちなみに、4月に発表された米国の経済指標のうち、雇用統計は非農業部門就業者数が前月比21.5万人増となり、事前予想の19.4万人を上回ったものの、3月の小売り売上高(前月比0.3%減)や住宅着工(108.9万戸、事前予想117万戸)が悪化した。

FOMC後の28日に発表された1~3月期の国内総生産(GDP)速報値も年率0.5%増と、10~12月期の同1.4%増から大きく減速した。これにより、市場ではFRBの追加利上げペースが緩やかになるとの見方が広がり、金が大きく買われる展開となった。

しかし、1,300ドル近辺では利益確定の売りがに加え、5月に発表された4月の小売売上が前年比1.3%増と、昨年3月以来、1年1カ月振りの高い伸びとなったことから、市場では6月14~15日のFOMCでの追加利上げ観測が再燃、金は1,250ドル台まで売られる格好となった。FOMCのメンバーである12地区連銀総裁に対する最近の記者インタビューでも、ニューヨーク連銀のダドリー総裁やサンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁をはじめ「年2回の利上げが必要である」との発言が多数を占めている。

利上げ幅少なく影響小か

今後の金価格を占う上でのポイントは、追加利上げのタイミングと利上げ幅であろう。タイミングとしては、米景気回復の確かさを前提に、6月14~15日、あるいは7月26~27日のFOMC後、および大統領選挙の11月8日の後の12月13~14日のFOMC後というのが大方の見方のようだ。

ただ、米国が利上げすれば中国やユーロ圏はじめ、世界経済に与える影響は大きい。国際通貨基金(IMF)は、4月の報告で2016年の世界経済の見通しを3.2%増と、1月時点から0.2%下方修正した。このため、利上げ幅は極めて小幅になることが予想される。となれば、金相場に与える影響も限定的であろう。

1,300ドル突破への準備段階

むしろ、金にとっては、ユーロ圏、日本、スイス中央銀行のマイナス金利に象徴される世界的な低金利の常態化が、今後の支援材料となろう。金の啓蒙機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は3月のレポートで、マイナス金利政策の長期的影響として、各国国債(ソブリン債)の運用利回りが低下し、「中央銀行および投資家の金に対する需要が構造的に高まる可能性がある」と指摘している。

なお、米国の実質金利(米10年債国債利回り―消費者物価指数)と金価格の関係を見ると、①実質金利がマイナス(すなわちインフレが高進中)の時、金が高騰、②実質金利が3%を超えると金は売られ、③実質金利が0~3%にある時、インフレ期待から金の魅力が増すーといった経験則がある(図2参照)。現在、金は③の局面にあり、1,300ドル突破に向けた準備段階にあると言えよう。

図2
チャート

《執筆者紹介》

柴田明夫(しばたあきお)
資源・食糧問題研究所代表 1976年東京大学農学部卒。同年丸紅入社。鉄鋼第一本部、調査部等を経て、2002年に丸紅経済研究所主席研究員。同副所長を経て、2006年同所長。2010年同代表。2011年に資源・食糧問題研究所を設立、代表に就任。<主な著書>『食料争奪』(日本経済新聞出版社)、『水戦争』(角川SSC新書)

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