日産証券CXレポート

内部要因に重さはあるもののレンジを切り上げたNY金 2016年5月9日(月)

マーケット ストラテジィ インスティチュート代表取締役
亀井 幸一郎

日本が連休となった4月29日から5月8日にかけてNY市場の金先物価格は、一時昨年1月以来の高値となる1306.00ドルまで買われた。特に4月28、29日の2日間で値幅で40.10ドルの上昇となり、週間ベースの上昇率4.9%は、今年2月8日の週の7%の上昇に次ぐものとなった。その翌週の5月2日に1300ドルを突破した。

過去最高の先物買い残

5月6日に米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した5月3日時点のデータでは、NY金先物市場では1週間でファンドの買い越し量が重量換算で156トンもの増加(オプションを除く)となっていることが判明した。全体の買い越し量も27万枚(1枚=100オンス)を超え845トンまで膨らんでいる。これはリーマン・ショックから2カ月後に金が騰勢を強めていた2009年11月に記録した816トンを抜いて過去最高となるもの。

端的には買いに偏った市場は過熱した状況といえ、早晩、自律的な調整局面とでも表現できる下げに見舞われることが多いのが経験則の教えるところ。つまり足元の金市場では警戒感が高まっているが、下げそうで下げず結果的に上値を追うというのが、2月以降の展開となっている。正確には過熱を警戒する売り物が出てくるのだが、下げ幅が小い水準で買いが入り、直ぐに反発という展開でここまで“つないできた” という印象が強い。

1300ドル台に乗せた5月2日の為替市場では、前週の4月28日の日銀金融政策据え置きの影響が残る市場環境の中で円が対ドルで強含みで推移、おおむねこのドル安が金価格をサポートしている。日本が祭日の3日には、アジアの時間帯にオーストラリア準備銀行(中央銀行)が予想外の利下げ(0.25%引き下げ)を行ったことを受け、豪ドルに対し円が急騰する流れの中でドル円も下落106円を割り込む展開に。

ロンドンの時間帯にはドルは全般に売られユーロに対し昨年8月25日以来の1.1616ドルまで売られることになった。その際にドル円は105.55円まで下げ、2014年10月17日以来の安値に。このドル安の中で金は1300ドルを上回った。しかし、1300ドル台に乗せた金だが、節目となる昨年1月の1307.80ドルは抜けなかった。やはりここに来ての市場の内部要因のロングへの偏りが頭の重さにつながっているのは否めない。

1300ドル近辺に控える売り物

5月6日には、4月の米雇用統計が発表され就業者数の増加は16万人と市場予想の20万人を大きく下回る結果となった。4.9%への改善が予想された失業率も変わらずの5%にとどまった。2009年7月以降ここまで回復基調をたどってきた米国経済だが、さすがに7年近く経過し、循環的に下りに入っても不思議のない時間帯に差し掛かっていることも、雇用の減速に不安をよぎらせることになる。この結果を受け金市場は急反発となったが、今度は1300ドルを超えることはできなかった。先物市場でパンパンに膨れ上がった買い残は、買い方が虎視眈々と売りのチャンスを待っているわけで、雇用統計の結果はその機会を提供したということになりそうだ。仮にこの先調整局面に入るとして、問題はどこまで下値を見るかかという点にある。表現を換えるならば、どの水準で支えられるかという点にある。

先高観の継続を示唆する金ETFの残高増

アジアなどの実需は手を引いた状況にあり、金の需給調査で知られるトムソン・ロイターGFMS社の調べでは、1-3月期の現物需要(実需)は前年同期比24%減少の781トンとなっている。年始以降の上昇が欧米投資マネーの流入により支えられていることを表すが、ここまでの展開で過去3年みられなかった特徴は、金ETFへの資金流入の増加が続いていることがある。最大銘柄「SPDRゴールド・シェア」の残高はこの連休中にも30トンもの増加をみている。5月6日の残高は834.19トンで、これは2013年12月11日以来、2年半ぶりの高水準となる。ここにきて価格水準が下がったタイミングで増えており、いわゆる“押し目買い”が入っていることを思わせる。

総じてこの間の価格展開からは、これまでのレンジ1200~1250ドルが一段切り上がり1250~1300ドルとなったとみる。6月のFOMC(連邦公開市場委員会)での利上げ判断の有無を織り込むまでは、高水準の買い建て(ロング)を抱えたまま、この水準での上下動を繰り返すことになりそうだ。

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《執筆者紹介》

亀井 幸一郎(かめいこういちろう)
マーケット ストラテジィ インスティチュート代表取締役、金融・貴金属アナリスト、1979年中央大学法学部法律学科卒業。山一證券に8年間勤務後、1987年投資顧問会社で日本初のFP会社でもあるMMI入社。1992年ワールド ゴールド カウンシル(WGC/本部ロンドン入社。企画調査部長として経済調査、世界の金情報の収集、マーケット分析、市場調査に従事。2002年現職。「急騰前に金を買いなさい」(廣済堂出版)など

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