日産証券CXレポート

米国の石油需要を押し上げる好調な自動車販売 2016年5月2日(月)

㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤敏憲

米国の石油需要を押し上げる好調な自動車販売

米国で自動車の販売が好調に推移している。マークラインズが集計している米国の新車販売統計によると、2015年4月~16年3月の新車販売台数は前年同期比4.8%増の1,760万台。特にSUVやピックアップトラックが含まれている小型トラックが同12.9%増の995万台と高い伸びを記録した

2012年半ばから高い伸びに

小型トラックの販売台数が高い伸びを示し始めたのは2012年の半ばで、これにより12年に48.8%だった小型トラックの販売構成比は15年に55.5%に上昇した。2月の新車販売台数は前年同月比6.9%増、うち小型トラックは12.8%増、3月は3.2%増と11.4%増。

米国では、新車販売、とりわけ小型トラックの販売状況は、景気のバロメーターの一つと言われている。この数字を見る限り、米国の景気はまずまず好調な状態を維持していると考えられる(グラフ参照)。原油安を反映してガソリンの価格が安くなっていることも燃費の悪いSUVやピックアップトラックの販売が伸びている理由と考えられる。

16年2月以降、ガソリンは5%を上回る伸び

自動車保有台数の増加と燃費の悪いSUVやピックアップトラックの構成比の拡大によって米国のガソリンの需要は押し上げられている。15年1月から10月のガソリン出荷量は前年同期比約4%増、異常暖冬の影響で15年11月~16年1月にかけて需要が伸び悩み、在庫も積みあがったが、16年2月以降は5%を上回る伸びを続けている(2月~4月は約6%増)。

米国では、15年に石油需要が前年比2~3%増加しているが、石油製品の総需要の過半を占めているガソリンが上述したような事情で増加していることが、その主な理由と考えられる。

日本は需要増に繋がらず

日本の自動車販売の事情は米国とは異なり、ガソリン価格が低下しても、なお、軽自動車やハイブリッドカーなど燃費の良い車種が新車販売の主流を占めている。これでは、新車販売が好調だったとしてもガソリン需要の増加にはつながるとはかぎらない。

むしろ、廃車される車と新車との燃費の差分だけガソリンの需要は押し下げられることになる。2000年代半ばから、自動車の登録台数が増加しているにもかかわらず、ガソリン需要が減少傾向で推移しているのは、このような理由によるものだ

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《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)。

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