日産証券CXレポート

原油、産油国会合の行方を読む 2016年4月18日(月)

立正大学経済学部教授
林康史

原油、産油国会合の行方を読む

主要産油国の石油担当相が昨日17日、カタールの首都ドーハで産油国会合を開き、原油の増産凍結に向け協議しました。本レポート執筆時点では詳細は不明ですが、サウジアラビアがイランの不参加を理由に合意の先送りを主張し、合意には至りませんでした。

サウジが合意しない合意は無意味

最近の注目材料は、この産油国会合でした。この会合は、石油輸出国機構(OPEC)諸国のみならず、非加盟も参加するというものでした。

前に、私は低価格競争(減産合意せず)は我慢比べだと述べました(3月22日付レポート)。その我慢比べに最も耐えうると思われるサウジアラビアの態度が注目されていましたが、今回、事前に、「OPEC加盟・非加盟に関わらず、主要生産国すべてが増産凍結に合意しなければ、合意はしない」との発表をしていました。

サウジアラビアが合意しないのであれば、合意は無意味ですので、非常に重要な発言でした(他の産油国に対する脅しと思われますが、原油の低価格を望んでいるのではないかとも思わせる発言でした。普通であれば、黙っているところですが、少し不思議な発言です)。

イランに耐えがたい増産凍結

サウジアラビア以外では、動向が注目されるのはイラン(OPEC加盟)と米国(OPEC非加盟)です。

イランについては、経済制裁が解除になったばかりということもあり、増産凍結どころか経済制裁前の水準まで増産する可能性が高く、「背に腹は代えられない」といったところです。また、イランの立場としては、「経済制裁を受けている間に他の国の供給量が多いために原油価格が下がったのだから、そのツケをイランが増産凍結という形で払わされる筋合いはない」ということでもあります。当面、イランの意思が変わるとは考えにくいようです。

イランは事前に会合への不参加を表明していました(実際にも参加せず)。この段階でサウジアラビアが求めていた条件を満たすことは事実上なくなったわけでした。

原油高望む米国

次に、世界最大の産油国となった米国ですが、シェールオイルの生産コストはOPEC諸国と比べると高く、このまま原油価格の低迷が続くと、シェールオイル企業の倒産へとつながりかねません。その点では原油価格が戻ってほしいのは自明です(一方で、消費国としては原油安はメリットもなくはない)が、合意に乗るわけにもいきません。米国に増産を凍結させて、米国の市場での力を弱めるというのがサウジアラビアのもともとの目的だからです。

二カ国等の合意は影響なし

12日には欧米の報道機関が、サウジアラビアとロシアは増産凍結に踏み切ることで一致したと伝えていました。増産凍結という“漁夫の利”狙いのロシアの最も望ましいシナリオは、シェールオイル関連企業の破たんによる生産量の頭打ちでしたが、我慢できなくなったというところでしょうか。もし、そうであったとしても、大局にはあまり影響はなさそうです。

そもそも、かつては“減産合意”というのがテーマでしたが、最近は“増産凍結”という話になっています。現在の状況を象徴していると思われます。結局、産油国会合は、予測通り、目新しい情報もなく、大局的な状況には著しい変化はないということを確認しただけでした。

中国の需要急増はない

世界経済のカギを握っていて、原油価格の動向にも影響のある中国経済ですが、中国国家統計局によると、3月の同国の原油処理量は日量1,061万バレル相当の4,491万トンで、前年比0.2%減でした。前年割れは2014年2月以来のことで、GDP成長率が鈍化するなかで、中国の需要が急に増加するとは考え難いところです。

上昇トレンド確認できず

以下、目先の市場の動きです。3月29日時点の米商品先物取引会(CFTC)発表の建玉明細を見ると、前週では30万7977枚であった買い越しが、今回の発表では30万5511枚と、若干、減少しています(表参照)。減少は、Wボトムの二番底(チャート上の左の底は「一番底」といい、一番底よりも、より浅く、より新しい底を「二番底」といいます)を形作っている2月11日の週以来のことです。

4月12日には42.17ドルの高値をつけましたが、4月12日発表の建玉明細でも3週連続で買い越しが減少しており、出来高からは、上昇トレンドが開始されているとの確認はとれていないと考えます。

当面、これまでの状況とは大きく違っているとは思えません。しばらく、低位でのもちあいが続く可能性が高いと見ています。

チャート

《執筆者紹介》

林康史(はやしやすし)
立正大学経済学部教授。大阪大学卒。法学修士(東京大学)。メーカー、金融3業態を経て、現職。<著書・訳書>『改定版 基礎から学ぶ デイトレード』、『トレーダーの発想術――マーケットで勝ち残るための70の箴言』(訳)『株式投資 第4版』(共訳)『デイトレード』『マネーの公理』『運とつきあう』(以上、監訳)以上、日経BP社、『戦略的リスク管理入門』(監訳)勁草書房、ほか多数。

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