日産証券CXレポート

金上昇、国際的な資産で最高 2016年4月11日(月)

マーケット ストラテジィ インスティチュート代表取締役
亀井 幸一郎

金上昇、国際的な資産で最高

2016年に入り早くも4カ月近く経過した。この間に金価格は久々の上昇率の大きさで注目されることになった。1~3月期のニューヨーク金先物価格は値幅で174ドル、率にして16.4%上昇、国際的な数ある資産の中で最高のパフォーマンスとなった。(グラフ参照)

四半期ベースの上昇率としては、1986年以来約30年ぶりの高さでもあった。2008年のリーマン・ショック後に米連邦準備理事会(FRB)がゼロ金利政策を採用し、その後3度に渡る大掛かりな量的緩和策、つまりドルのバラ撒きを行った。このドル価値を薄める政策に反応し、金価格は騰勢を強め2011年9月に1923.7ドルの過去最高値を記録した。

そこに至る過程で急騰局面は何度かあったが、四半期ベースとなると上昇率は意外にも10%に満たない状況だった。一方、円建て価格(東京商品取引所先物価格)も、この間のドル安円高への動きを跳ね返す形で、グラム単価で291円、7%の上昇となった。ちなみに日経平均株価は12%の値下がりとなっている。

SPDRゴールド・シェア、8,000億円増加

前回、金ETF(上場投信)への資金流入を取り上げたが、結局、最大銘柄「SPDRゴールド・シェア」の残高増は年初から3月31日までで176.83トン、時価ベースでは約8000億円にもなった。

金ETFへの投資は、現物地金投資に類似するものでレバレッジは利かず、多くは目先の値上がり益狙いではないとみられる。4月に入り増加は止まり、若干ながら減少も見られているが、大半は滞留したままとなっている。

これだけの規模の資金流入は、2010年4月のギリシャ危機が表面化して以来のことだが、足元ではそうした危機は起きていない。この現物型の金商品への資金移動の規模自体が、先行きの世界経済に対する投資家の警戒感を表していると言えよう。

1200~1250ドルの値固めか

さて現実のドル建て金価格(以下、金価格)だが、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)直前の3月11日に1年2カ月ぶりの高値となる1287.8ドルを記録したが、それは利上げ見送りをフルに織り込んだものといえる。

実際に3月16日にはFOMC声明文で見送りが明らかになり、経済見通し、さらにイエレン議長の記者会見を通してFRBの利上げ見通し自体が下方修正されたが、11日に記録した高値更新には至らなかった。「噂で買って、事実で売る」と表現されるが、相場としては目先の材料出尽くしという理解となる。いわば、年始からの金の上昇局面も第一幕終了ということになる。

昨年までのここ3年ほどの金市場であれば、これで年間ベースの高値を出し切り徐々に水準を切り下げ下落に向かうというのがパターンとなっている。果たして今回はどうか。金ETFに移動した資金が滞留したままになっているとしたが、3月利上げ見送りで今年の第一幕の終了を示すが、中長期的な観点からは第二幕へ向けた動きに移行しており、1200~1250ドルの根固め中ということになる。

慎重姿勢に転じたFRB(連邦準備理事会)

4月6日には3月のFOMCの議事録要旨が公開されたが、内容は声明文や当日のイエレン議長の記者会見よりもハト派的印象の強いものだった。意外性があったのは、今月下旬に開かれる4月のFOMCでの利上げ見通しについての議論がなされていたこと。

4月にも利上げを視野に入れるべしとするタカ派の発言がある一方、多くは4月会合での利上げには否定的な見解が強まっていることが明らかになった。議事録とはいえ、次回会合に対する意見交換の内容を公開するのは珍しく、利上げに対する慎重姿勢を強調する意思の表れというべきか。

ドル高是正の中で堅調展開持続

この内容に為替市場では、ドル安が進むことになった。とりわけ、ドル円相場は時差の関係で議事録が公開された4月7日のアジア時間の午後に、一気にドル安円高が進み、夜には107円台までドルが売られることになった。

米国金融当局が、明確に“ドル高是正”に進み始めたと解釈するならば、金価格は今後も底堅く推移することになりそうだ。目先は4月17日に予定されている、カタールでのOPECと非OPEC各国による産油国会合がどのような結論に達することができるのか。ドル安傾向の中で原油価格にも落ち着きが出始めているが、話し合いが不首尾に終わるなら、再び金融市場は波乱に見舞われ、金の押し上げ要因ということになりそうだ。

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《執筆者紹介》

亀井 幸一郎(かめいこういちろう)
マーケット ストラテジィ インスティチュート代表取締役、金融・貴金属アナリスト、1979年中央大学法学部法律学科卒業。山一證券に8年間勤務後、1987年投資顧問会社で日本初のFP会社でもあるMMI入社。1992年ワールド ゴールド カウンシル(WGC/本部ロンドン入社。企画調査部長として経済調査、世界の金情報の収集、マーケット分析、市場調査に従事。2002年現職。「急騰前に金を買いなさい」(廣済堂出版)など

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