日産証券CXレポート

1200ドル台前半で上値を窺う展開 2016年3月28日(月)

(株)資源・食糧問題研究所
代表 柴田明夫

1200ドル台前半で上値を窺う展開

金は2月前半にかけて急騰し、後半以降やや騰勢を弱めたものの上昇基調を維持し、3月11日に1,280ドルの高値を付けた。その後、1,220ドル台まで反落したものの、節目の1,200ドル台は維持しており、上値を目指す展開には変わりはない(図1)。

原油高、地政学リスクなどが響く

年初来、金が大きく買い戻された背景には、①原油が1月20日、2月11日に1バレル=26ドル台と12年9カ月ぶりの安値を付けた、②中国の景気減速懸念から欧米株価が下落したことで投資家のリスク回避姿勢が強まった、③イスラム教スンニ派サウジアラビアとシーア派イランとの国交断絶、欧州難民・テロ問題、北朝鮮問題など地政学リスクが高まった、④米シェールオイル開発企業の経営悪化に伴う約1.7兆ドルともいわれるジャンク債市場への悪影響懸念が出た―などから安全資産としての金が見直されたものといえよう。軟調な米国景気指標を背景に、年4回とみられた米連邦準備銀行(FRB)の追加利上げペースが後退したことも、金価格の下支え要因となっている。

地政学リスクを背景に、金準備を増やす中国、ロシア

より長期的な観点では、中国、ロシアなどの中央銀行が着直と金外貨準備を増やしているのも強材料である。金の啓蒙普及機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、中央銀行およびその他の公的機関が2015年10~12月期に積み増した金は167.2㌧と、前年同期の133.9㌧から25%増加した。2015年通年の純購入量は588.4㌧と、金購入が活発だった14年の583.9㌧を上回った。

特に、2014年~15年12月にかけて、中国が708㌧増(1054㌧から1762㌧)、ロシアが184㌧増(1208㌧から1393㌧)と両国の動きが目立った。ロシアの場合、原油価格の低迷と欧米の経済制裁継続により、リスク管理目的で金準備の拡大を迫られているといえよう。

中国も、2001年の金準備量395㌧から2010年に1,054㌧に増やし、14年まで同量を保有してきたが、15年に入って1,762㌧へとさらに積み上げている(図2)。同国は昨年11月、国際通貨基金(IMF)が中国の人民元を特別引き出し権(SDR)の構成通貨(ドル、ユーロ、円、ポンド)入りを決めた(実施は2016年10月)。

なお、この人民元国際化の動きに先立って、中国人民銀行が8月に突如として人民元切り下げ介入を実施したが、人民元安の行き過ぎを懸念して急きょ、ドル売り・人民元買いを進めた結果、中国のドル準備高が大きく減少した。こうした経済的・地政学的リスクが高まる中で、中国はドル外貨準備の分散先として金準備を積極的に積み増している。安全資産としての金は、1200ドル台前半での底固めの後、再び上値を目指す展開となりそうだ。

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《執筆者紹介》

柴田明夫(しばたあきお)
資源・食糧問題研究所代表 1976 年東京大学農学部卒。同年丸紅入社。鉄鋼第一本部、調査部等を経て、2002 年に丸紅経済研究所主席研究員。同副所長を経て、2006 年同所長。2010 年同代表。2011 年に資源・食糧問題研究所を設立、代表に就任。<主な著書>『食料争奪』(日本経済新聞出版社)、『水戦争』(角川SSC 新書)。

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