日産証券CXレポート

金、FOMCの内容がその後を左右 2016年3月14日(月)

マーケット ストラテジィ インスティチュート代表取締役
亀井 幸一郎

金、FOMCの内容がその後を左右

年始以降、先週末(3月11日)までに値幅で199.2ドル、率にして約19%の値上がりとなったNYコメックス金先物価格(中心限月)。数ある資産(アセット・クラス)の中で最高のパフォーマンス(運用収益)となっている。円建てでも、この間のドル安円高の動きを跳ね返す形で、グラム単価で490円、約12%の上昇となった。ドル建てでは強気相場のひとつの証しとして見られる、直近安値(終値ベース)から20%超の上昇となったことも、話題となった。

今週は、日米中央銀行による政策会合が予定されている。3月15日の日本銀行については、すでに1月29日の政策決定会合にてマイナス金利の導入をしたばかりで、変更なく通過するとみられる。金市場を見る上での焦点は3月15、16日の連邦公開市場委員会(FOMC)となるが、「利上げ見送り」という前提で金価格は上昇しており、決定内容は当面の方向性を決定づけることになる。

相場反転は利上げ2週間後

昨年12月のFOMCで9年半ぶりに政策金利(FFレート)の引上げに転じた連邦準備理事会(FRB)。それまで米利上げ観測の高まりの中で、売りが先行する市場環境が続いて来た金市場だけに、利上げ着手はいわゆる“材料出尽くし”となり、「反転のきっかけになる」との見通しを筆者はもっていた。

しかし、発表後の市場ではすぐにそうした反応は出す、出たのは、2週間を経過した年始以降となった。政策転換直後の反転相場が見られなかったのは、声明文と同時に発表されたFOM参加者全員による経済見通しで2016年中に4回の利上げが想定されていたことによる。市場予想を上回っていたことが、金価格に反発のきっかけを与えない方向に作用した。

複合要因で上昇

この流れを変えたのは年明け以降の複合要因だった。年始以降の国際金融市場に波乱をもたらした中国経済の減速懸念と人民元切り下げ観測、下げ止まらぬ原油市場、不良債権処理が遅れている欧州金融界への懸念、中東情勢に加え英国のEU(欧州連合)離脱問題が加わった地政学要因などである。

これらが相互に作用する形で、株式市場を揺さぶり、為替、債券市場(金利の上下動)も揺さぶった。株など市場の変動(ボラティリティ)の大きさは、そのまま投資家や企業家心理に警戒心を抱かせ、委縮させる。この環境こそが、金融上では引き締め効果として作用することになる。想定以上に低下してきた失業率に順調に増えている雇用者数、さらに、ここにきて製造業にも底打ちの気配が見えている米国だが、FRBもこうした外部要因を考慮せざるをえない状況に追い込まれたのが、年始以降の市場環境だった。

2月の上昇は新規資金の流入

このFRBを取り巻く環境の変化を映す形で金価格の上昇が続いて来た。金市場の内部要因面では、1月と2月は上昇の背景が明らかに変わったことが指摘できる。1月は売り建て(ショート)の買戻しによる上昇。すなわちショート・カバー・ラリーであったこと。これに対し2月は、明らかに金市場に新規資金が流入することでもたらされた上昇であったことがある。

新規資金流入は、NYコメックスの先物市場での取り組み増をともなった買い建て(ロング)の増加に表われる。さらに金ETF(上場投信)の残高に反映される。特に金ETFの増加は、現物投資に等しいもので(レバレッジが利かない)、一般的に中長期の視点での資金流入とされる。したがって、金市場ではETF残高の大きな変化は、大勢的な流れの変化を把握する材料として扱われる。

ちなみに、金ETFの最大銘柄「SPDRゴールド・シェア」の残高は、2月だけで108.04トンもの増加をみた。これはギリシャ危機が浮上した時にあたる2010年5月の108.93トン増に並ぶもので、それ以外では後にこの銘柄の筆頭保有者として名前が登場したジョン・ポールソンの「Paulson & Co」などヘッジファンドの大量取得が注目された2009年2月の185.7トンに次ぐ規模となる。

金上昇は一段落?

2月にこれだけの規模のETFの残高増の背後にあるのは、まずはFRBによる年内利上げ回数の減少観測がある。カネ余りの中での低金利環境の継続は、次に来るインフレ環境の導火線となるか、あるいは袋小路に入り限界説が唱えられ始めた金融政策の行く末を表すものか。まずは、3月16日のFOMC声明文と経済予測、さらにイエレン議長の記者会見が注目される。

一般的には、年始からの金上昇はここで一段落というところだが、FOMCの内容次第では調整を経て再騰ということになりそうだ。

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《執筆者紹介》

亀井 幸一郎(かめいこういちろう)
マーケット ストラテジィ インスティチュート代表取締役、金融・貴金属アナリスト、1979年中央大学法学部法律学科卒業。山一證券に8年間勤務後、1987年投資顧問会社で日本初のFP会社でもあるMMI入社。1992年ワールド ゴールド カウンシル(WGC/本部ロンドン入社。企画調査部長として経済調査、世界の金情報の収集、マーケット分析、市場調査に従事。2002年現職。「急騰前に金を買いなさい」(廣済堂出版)など

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