日産証券CXレポート

金は1200 ドル台を固める動き、マイナス金利は強材料 2016年2月29日(月)

(株)資源・食糧問題研究所
代表 柴田明夫

金は1200 ドル台を固める動き、マイナス金利は強材料

金が買い戻されつつある。ニューヨーク金は、2 月に入って1 オンス=1,200 ドル台を回復し、24 日には一時1,250 ドルを突破した。原油相場の下落や欧米株式市場の軟化で、安全資産としての金が買われた格好だ。ただ、一本調子の上昇は続かず、26 日には米商務省が発表した昨年10~12 月期の国内総生産( GDP) 改定値が、前回速報値の年率換算0.7% 増から同1.0% 増へ上方修正されたことから、早期の米追加利上げに対する警戒感が強まり、1,220 ドルまで反落した( グラフ) 。今後の金相場をどうみるか、探ってみよう。

金、ドル為替、米金利とマイナス相関

金相場に影響を与える主な要因としては、地金需給( 鉱山産金量、インドや中国の需要、金ETF 残高、中央銀行の準備金)、原油相場、米金利( その背景にあるFRBの金融政策) 、ドル為替相場、株式市場、地政学リスク― などがあり、これらはすべて長期的には( プラス・マイナス) 相関している。ただ、短期的には、その時々の市場で注目される要因によって金相場が変動する。特に、2013 年以降、金が大きく売られる過程で強い( マイナス) 相関を示しているのがドル為替相場と米金利の動向だ。

ドル建てで取引されている金相場は、ドルが高くなれば金は割高感から売られ、逆にドルが安くなれば金はドル代替資産として買われる。ちなみに、円が1 ドル80円を割っていた2012 年から一気に円安・ドル高が進み、昨年( 2015 年) 6 月には125 円までドル安へと転換した。この間、金は1,700 ドル台から1,000 ドル近辺まで続落した。ただ、今年に入って円高・ドル安から1,200 ドル台を回復している( 図)。

ポイントはF R B の利上げ

今後の金相場を占う上でのポイントは、円ドル相場の行方であり、その背後にある米FRB( 連邦準備制度) の追加利上げのタイミングおよびその回数による。FRBは、昨年12 月に9 年半ぶりの利上げに踏み切り、2016 年中に4 回の利上げを想定していた。FOMC( 米連邦公開市場委員会)は8 回( 1/26~ 27、3/15~ 16、4/26~ 27、6/14~ 25、7/26~ 27、9/20~ 21、11/1~ 2、12/13~ 14) 開かれる予定だ。足元の米経済の回復基調が精彩を欠くとはいえ、緩やかな回復基調にあることは間違いなく、予定通りの利上げとなれば、ドル高が進み、金には売り材料となろう。

しかし、イエレン議長は慎重だ。2 月1 0 日の米下院金融サービス委員会証言で、「経済が下振れすれば利上げペースも減速するのが適当だ」と表明。しかも、世界的な株安や資源安が収束しなければ利上げを見合わせる可能性にも踏み込んだ。これを受けて市場では、年内の利上げは見送られるとの見方も浮上し始めた。その場合、金は年内に1,200 ドル台後半まで買われる公算が大きい。

最悪のシナリオ、米マイナス金利

一方、ロイター通信( 2 月3 日) によると、FRB が2016 年内に米大手銀行向に対し行う健全性審査(ストレステスト) に、米短期債利回りがマイナス化するとの想定が盛り込まれているとしている。米マイナス金利は今のところFRB の想定する「最悪のシナリオ」に過ぎないが、日銀のマイナス金利導入でいずれ円安ドル高が進み、米輸出競争力が削がれれば現実味のある仮設であるとしている。この場合は金にとって弱材料だが、マイナス金利導入そのものが将来的な不安を募ることになる。このため、むしろ安全資産の逃避先として金が買われる可能性が強い。

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《執筆者紹介》

柴田明夫(しばたあきお)
資源・食糧問題研究所代表 1976 年東京大学農学部卒。同年丸紅入社。鉄鋼第一本部、調査部等を経て、2002 年に丸紅経済研究所主席研究員。同副所長を経て、2006 年同所長。2010 年同代表。2011 年に資源・食糧問題研究所を設立、代表に就任。<主な著書>『食料争奪』(日本経済新聞出版社)、『水戦争』(角川SSC 新書)。

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