日産証券CXレポート

原油価格低迷には複数の要因 2016年2月8日(月)

㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー
伊藤 敏憲

原油価格低迷には複数の要因

原油、1月に12年振りの安値

原油相場は、12月から1月にかけて急落し、1月20日に、NYMEXのLight Sweet Crude Oilの期近先物価格(引け値)が1バレル26.55ドル、ICE Futures EuropeのBrent Crude Oilが同27.88ドル、東京商品取引所のドバイ原油が1キロリットル19,100円と、いずれも2003年以来の安値を記録した。原油相場は、その後反発したものの依然軟調な展開が続いている。(グラフ参照)

需給の緩み続く原油

原油の足元の需給は緩んでいる。需要が想定外に伸び悩んでいるからだ。中国、欧州などの景気鈍化に加え、昨年12月から今年1月初旬にかけて米国、欧州、東アジアなど北半球の気温が高めに推移し、暖冬で暖房用燃料やガソリンの需要が落ち込んだことも響いている。

一方、供給面では、北米など2000年代半ば以降に生産が拡大した地域の多くは減産傾向にあるが、そのペースは緩やか。OPECの増産もあり、世界的に需給が緩んだ状態が続いている。このため、主な消費国や産油国の原油及び石油製品の在庫は高水準に積み上がったままとなっている。

チャイナショックや米国利上げも影響

原油相場の低迷は、需給の緩みだけでなく、複数の理由によって起きたと考えられる。その一つは、中国経済への懸念、いわゆるチャイナショックである。 もう一つが米国の動き。昨年12月に利上げした際、FRBがさらなる利上げを示唆したことも影響している。ドル建ての商品は、ドル高が相場の下落要因になる。特に原油はその傾向が強く、2007年から09年にかけての急騰落局面、2014年8月から15年7月にかけての急落局面などで、原油価格とドル・ユーロ為替相場には強い相関関係が見られた。

ちなみに、中国経済への懸念や米国の金融引き締め政策は、原油だけでなく、株式や様々な国際商品の相場に大きな影響を及ぼしており、多くの金融商品、国際商品が冒頭に示した1月20日に最安値を記録していた。

サウジアラビアとイランの関係悪化もOPEC内の生産調整が難しくなったとの見方から下げ材料になった。ただ、相場の戻り局面でこのニュースが出れば、中東地域の緊張を高めるリスク要因として恐らく上げ材料になったと考えられる。なお、サウジアラビアは、これまで中東諸国の中では比較的政情が安定していたが、安定しているとは言えなくなっている。

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《執筆者紹介》

伊藤敏憲(いとうとしのり)
伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役。1984年東京理科大学卒。同年大和証券入社。同年に配属された大和証券経済研究所(現:大和総研)で、エネルギー産業等の調査担当、素材・エネルギー産業調査の統括、上場企業調査の統括を歴任し、1999年退社。HSBC証券、UBS証券のシニアアナリストを経て、2012年伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー設立。現在、経済産業省「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会」、「原油価格研究会」、日本証券アナリスト協会「運営委員会」などの委員に就任中。<主な著書>「石油・新時代へ提言」(燃料油脂新聞社)、「伊藤敏憲の提言」(月刊ガソリンスタンド)、「Expert Power」(石油ネット)。

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