日産証券CXレポート

弱材料出尽くし、反転のタイミングを計る金 2016年2月1日(月)

(株)資源・食糧問題研究所
代表 柴田明夫

弱材料出尽くし、反転のタイミングを計る金

金価格に底入れ感が強まっている。ニューヨーク金は、昨年12月3日に1オンス、1,046ドルの安値を付けた後、年明け早々1,100ドルを回復。1月末には1,116ドルまで戻している。一頃の下値不安が薄れつつあるのは確かだ。

この1年間の平均価格をみても、他のコモディティに比べ金の下落率は限定的だ。2015年の前年比下落率はWTI原油が47.5%(1バレル=92.9→47.5ドル)、LME銅が19.8%(1ポンド=6,863→5,582ドル)だったのに対し、金は8.5%(1,265→1,158ドル)に止まっている。

払拭されてない急落のモメンタム

とはいえ、2013年の平均価格1,700ドル超から3年にわたる急落傾向のモメンタム(惰力)が払拭されたわけではない。強弱材料が錯綜する中、金は弱材料を徐々に相場に織り込む一方、新たな強材料に反応しようとの動きがマーケットで醸成されつつあるのが実情と言えよう。

図1で見るように、金が下げ局面に変わったのは2013年に入ってからのことだ。当時の売り材料を挙げると以下の通りである。

①金が2012年10月に1,900ドル超の史上最高値を付けたのを契機に、投資家がリスク回避選好(リスクオフ)を改め、金を売り株を買い始めた。②FRB(連邦準備銀行)がQE3(量的緩和第3弾)の解除を検討し始めた。③ゴールドマン・サックスが金相場見通しを引き下げた。これを契機にメリルリンチ、ジョージ・ソロス、ジム・ロジャーズ、ドイツ銀行などの機関投資家による金売却が伝えられた。④世界最大のETF(上場投資信託)SPRDゴールド・シェアが金を売却した。⑤中国の理財商品に絡み金売却懸念が広がった。⑥債務危機に陥ったキプロスが、その返却のため保有金(約14トン)を計画しているとの報が出た。

原油急落が拍車

金の売り圧力をさらに強めたのが2014年後半からの原油の急落だ。一般に、原油価格の上昇は、主にインフレヘッジおよびリスクヘッジの2つのルートから金価格の押し上げ要因となる(逆に原油価格が下がれば金も売られる)。金が1,000ドルの節目を突破し急騰した2009~13年にかけて、金価格を原油価格で割った金/原油比価は、20~25倍で推移していた。しかし、原油が急落した2014年後半以降は、金の下落幅が限られたため、同比価は30倍超となった(図2)。これまでの金と原油の連動関係が薄れた格好だ。

中東、FRB、中国に注視

2016年はチャート的には、金の弱材料はほぼ相場に織り込まれたと言えよう。問題は強材料だ。筆者は以下の点を取り上げたい。
①中東情勢を巡る地政学リスクの高まり。特に、イスラム教スンニ派サウジアラビアとシーア派イランとの国交断絶。②世界景気の減速を受け、米FRBの追加利上げペースが先送りされる公算が高まった(当初の年4回から2~3回へ)。③中国、ロシアの金外貨準備が増加。ワールド・ゴールド・カウンシルによると、2014年~15年9月にかけて、中国654トン増(1,054→1,708トン)、ロシア144トン増(1,208→1,352トン)となった。
、上記要因が、直ちにこれまでの金下落モメンタムを転換させるまでの力には欠けるものの、年後半に向け価格反転の必要条件は整いつつあるといえよう。

(図1)

チャート

(図2)

チャート

《執筆者紹介》

柴田明夫(しばたあきお)
資源・食糧問題研究所代表 1976 年東京大学農学部卒。同年丸紅入社。鉄鋼第一本部、調査部等を経て、2002 年に丸紅経済研究所主席研究員。同副所長を経て、2006 年同所長。2010 年同代表。2011 年に資源・食糧問題研究所を設立、代表に就任。<主な著書>『食料争奪』(日本経済新聞出版社)、『水戦争』(角川SSC 新書)。

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